Z世代を通して見える「社会に余裕がない」原因 賢い人なら概念を厳密に定義できるという幻想
東洋経済オンライン / 2024年8月28日 9時30分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――たとえば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、前回に続き、著者の舟津昌平氏と組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。
どうすれば余裕を持てるようになるのか
勅使川原:『Z世代化する社会』の中では、一部の企業やインフルエンサーは、根拠なく不安をあおってビジネスに誘導しようとするから、その対抗策として、われわれも根拠なく自信を、余裕を持てばいいんだって書かれていますよね。私もその主張自体は正しいとは思うんですが、「余裕」という手触りのある何かが存在しているわけでもないよなあ、とも思うんです。余裕を持つことが対抗策になる、とお考えになった背景をもう少し教えていただけますか。
舟津:そうですね。現状がよくないと仮定したうえで、なぜそれがよくないのかを考えると、いろいろな理由が出てきます。でも、よく挙がるような「無能だから」とか「能力がないからできない」というのはトートロジーでしかない。
やっぱり、社会に余裕がないんだと思います。それには学生たちも共感してくれる部分があって、たとえば就活ではみんな余裕がなくて焦ってイライラしていると。それに対して「余裕を持とう」と言うのですが、おっしゃるように、「これこそが余裕」というものはないんですよね。
勅使川原:そうなんです。余裕がないと感じると、不安や欠けているものを見つけて、それを解決しようとする。そのために何かを埋め合わせようとして、ますます余裕がなくなるループに陥ってしまうのではないかと。
舟津:なるほど。そもそも、余裕がある状態と余裕がない状態は、どうやら対称じゃない。「ない」なら、埋めれば「ある」ようになる、という話ではないんですね。
勅使川原:そうなんですよね。
厳密な定義を求めることに意味はない
舟津:今の問いにつながる回答として、本を読んでいただいた方にこうした感想をいただきました。要約ですが、
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