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Z世代を通して見える「社会に余裕がない」原因 賢い人なら概念を厳密に定義できるという幻想

東洋経済オンライン / 2024年8月28日 9時30分

勅使川原:そうか。うん、そうですね。

舟津:だから、いまは余裕の意味を強調すべき時期だと思います。余裕を持つことは勝ち組の特権ではないと。たとえ内定がなくても、「まあ、なんとかなるよ」と言ってもいいよと。

勅使川原:そうですよね。逆に、そういう人ほど余裕を持っていたほうがいいかもしれない。いまは発言権が奪われちゃっているんだ。「お前が言うの?」みたいになっている。完璧であることを100%の力で目指したうえでしか脱力できない社会というか。そんなのしんどいだけです。

舟津:これは個人に限らない話で。たとえば、環境に配慮することが評価されるのは、あくまでビジネスで結果を出している企業だけですよね。環境配慮した結果、会社が潰れたらどうなるんでしょう?誰か助けてくれるでしょうか。

勅使川原:わかりやすい(笑)。たしかに、潰れてしまっては本末転倒ですね。

舟津:そうなんです。だから、企業も形やフリだけの環境配慮をしてしまうんです。環境に配慮しろって言うけど、業績が悪化したら社会や市場は評価しないし、見捨てるでしょと。世の中で叫ばれる課題にも、そういう白々しさがある。

勅使川原:企業はそれを重々承知のうえでやっているということですね。

余裕は誰かに受け止めてもらった経験から生まれる

舟津:わかっているのは学生たちも同じです。だから、私は学生たちに対してはそういう白々しさは出さないように極力努めています。どうせバレているので。

たとえば、この授業ではあなたの言いたいことを言っていいよと伝えても、変なこと言ったら怒るんでしょ、みたいな反応は絶対あるんですよ。結局はいい子な発言しか許さないんでしょって。だから私はちゃんと振り切るようにしてて、全部受け止めますよと。最初は様子をうかがう感じなんですけど、次第に学生に伝わっていく。だからたまに授業後のアンケートでも、「本当に何を言ってもいいので驚いた」みたいなものをいただきます(笑)。

勅使川原:それはすごい(笑)。私は自分の本の中で、余裕を誰かに受け止めてもらった経験に結びつけて書いたんですけど、何であっても誰かに受け止めてもらえたことが余裕につながって、自分を信じる根拠なき何かになるのかもしれないですね。

舟津:まさにそうだと思います。

勅使川原:でも、何でも受け止める人って、教員の方でもたぶん10人いたら1人ぐらいな印象があります(笑)。

舟津:私自身が「多様性の時代だから何でも受け入れますよ」みたいなスタンスではないのがよいのかもしれません。それって結局は私の意思じゃなくて、他者が求めるからしてるってことなので。私自身は不誠実で、何でも受け入れるってほんまにそんなんできるんかい、と疑問を持っているから白々しくないのかもしれない(笑)。

勅使川原:ひねくれた視点ですけど、それがかえっていいのかもしれませんね。さっきおっしゃった「どうせバレているので」っていうのも、地に足のついた誠実さだと感嘆しました。憎い!(笑)

(8月29日公開予定の第3回に続く)

勅使川原 真衣:組織開発コンサルタント

舟津 昌平:経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師

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