Z世代を通して見える「社会に余裕がない」原因 賢い人なら概念を厳密に定義できるという幻想
東洋経済オンライン / 2024年8月28日 9時30分
「若者が不安ビジネスに駆り立てられることに対して、根拠のない自信が対抗手段になると書かれるのは、こうした種類の自信が、『ミメーシス』(社会学者の宮台真司氏は『感染』と翻訳)として伝えるしかないことを直感しているからこそ実効的なものとして書けるのでは」
これを解釈すると、自信を持ちましょう、余裕を持ちましょうと言ったときに、どうやったらできるのかという、唯一で簡便な方法はない。自信は直感や身体的に会得するもので、何かを機械的に揃えれば目的が達成されるという単純なものではない。
「頑張れ」という言葉も、それに近いものだと思っています。頑張るとは何か、どこまでやれば頑張るとされるのか、といった厳密な定義を求めることに意味はないんです。でも、頑張れと言われるだけで、その瞬間、頑張れるということはあります。それはまさしくミメーシス、感染のようなものです。そして、教室や会社など組織の中には、そういうものがあふれているはずです。
頼りない答えだ、何も言っていないに等しい、という反論があることは承知で、いざ解決策を提示しようにも、自信を持とう、頑張ろう、としか言えないんだって、私はどこかで思っているのですよね。
勅使川原:本来はそう理解するべきだと思います。ただ、実際には、賢い人であればざっくりした概念を逆算的に定義できると思われていて、それが至上命題のように掲げられ、ありがたがられてしまうんです。「こうすれば○○になれる」みたいな。
舟津:ああ、まさに。すごい人が自信を持っているから、その人のようにすれば自信が持てるという感じで。でも、逆算的な方法では同様には行き着かない。
勅使川原:でも、そういう成功モデルのリバースエンジニアリングによって導かれる解というのは、どうもありがたがられていますよね。関連して、「コンピテンシー」という成功者との差分を示す概念への懸念もこれまでの著作で書いたつもりですが、私の指摘なぞどこ吹く風。なんだったら、賢い人が考えた正解とか、成功法以外は信じられていないともいえる状況ではないかと。
舟津:やっぱり、みんな自分の都合のいい欲望を満たしたいんだと思います。知らない人にでも「あなたが正しい」と言ってほしいし、その言葉に権威があればあるほどいい。そして、わかりやすければさらにいい。そして、都合のいい言説ばかりが出回っていく。すべてが都合のいい論理でつながっている。自分がこうじゃないかなと思っていることを、権威のある人に言ってもらえれば、「おお、そうなんだ」と自己強化できる。
アカデミアでは、両面性があることが評価される
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