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Z世代を通して見える「社会に余裕がない」原因 賢い人なら概念を厳密に定義できるという幻想

東洋経済オンライン / 2024年8月28日 9時30分

勅使川原:そうなんですよね。でも、一部のコンサルが最たる例かもしれませんが、消費社会では売れる論理や概念を生み出した人が勝者になってしまいます。逆に言うと売れない人はダメな人とされてしまう。そうなると、やっぱりアカデミアが最後の砦になるんですかね。

舟津:たしかに、アカデミアというのは基本的に営利第一主義では動いてはいないので、その点は砦となりうる1つの理由だと思います。たとえばとある先生が「いい研究って何だと思いますか」みたいなオープンクエスチョンに対して、「両面性がある研究」だと答えられていました。絶対的にいい制度や悪い制度は存在しない。ある制度にはメリットもあればデメリットもある。それを理解したうえで、どちらがいいかを考えるのが大事だと。

勅使川原:それまたいい答えですね。

舟津:で、その次がまたニクくて、逆に会社が喜ぶことばかり言っている研究者はダメですよって言い切るんですね(笑)。でも、世の中にウケそうなことばっかり言ってちゃダメだって雰囲気は、まだアカデミアにはあります。たとえば、現在学習院大学にいらっしゃる守島先生という方も、成果主義について書いた論文の中でこんなことをおっしゃっていました。

舟津:そもそも、成果主義は、バブル崩壊の救世主みたいな感じで90年代に急速に広がりました。でもそのときは失敗して、なんとなく忘れられたんですよね。それで、成果主義って何だったのか、ちょうどブームが終わりかけの2004年に書いておられて。

冒頭でいきなりこう言うんですね。「結論から言えば、私は、どのような定義をしたとしても、人事施策としての成果主義を行うことで、企業が活性化するなどと、期待することはできないと思っている」と。人事制度や報酬制度は、会社にたくさんあるルールの中のたった1つにすぎない。しかも、給与の一部分を変えるマイナーチェンジだけで何かが変わると思うこと自体が間違っていると書かれるんです。

勅使川原:冒頭に書いちゃうのがすごいですね。

舟津:カッコいいですよね。でも、業界でとても信頼されている方だから言える、というのはあるかもしれません。地味ながらもちゃんとしたことを主張している人は目に付きにくい。でも、都合のいいことを簡単に言ってくれる人は人気が出るので、目に付きやすくなる。単純すぎる構図ではありますし、もちろんすべてがそうではありませんけど、そういう現実はアカデミアでも見受けられるんだと思います。

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