なぜ若者はキャリアに不安を持っているのか 「成果主義」ではなく「貢献主義」で捉え直す社会
東洋経済オンライン / 2024年8月29日 9時0分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――たとえば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、前回、前々回に続いて、著者の舟津昌平氏と組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。
なぜ若者はキャリアに不安を持っているのか
勅使川原:『Z世代化する社会』では、若い世代が自分のキャリアに不安を持っていて、早く成長しないといけない、転職も考えないといけないと悩んでいる。でも、そうした不安は企業をはじめとする社会が作り出しているものでもあるから、真に受けすぎる必要はなく、余裕を持てばいいんだと書かれていますよね。
私が研究する能力主義においても同じ問題意識を持っていて、人の「能力」は客観的な、科学的な基準で判断できて、それに基づいて人を選抜、評価できると考えられている。でも、「能力」は明確に定義できるものではなくて、人との関係の中で揺れ動くもの。偶然や持ちつ持たれつの関係の中で人が集まって仕事をすることが、実際には社会の大部分を支えていると思っています。スペシフィックに白黒つけて、賢い大人が考えたアルゴリズムで社会なんて到底回っていないんです。
ただ、こうした現実を若い人にもわかってほしいと思う一方で、自分が同じ立場にあったら、同じようにキャリアに不安を持つだろうなとも思うんです。この葛藤を乗り越える知恵を舟津先生からいただけたらと思うのですが、いいでしょうか。
舟津:おそらくマクロの話と個人の話があって、まずマクロの話でいうと、会社側がすべきことってあると思うんですよね。たとえばいまや神話といわれるかもしれませんが、終身雇用をする、つまり最後まで面倒見るという制度は象徴的です。私たちはずっと雇うつもりでいるからって言われたら、雇われている側はやっぱり余裕が出るじゃないですか。もし、余裕が出すぎて働かない社員がいるとしても、それは必要悪。そういう社員も許容して得られるものが余裕なんで。
逆に、肥大化した人件費をいかに減らすかということのみに企業が力を入れているとしたら、若い人は絶対に気づくと思うんですよ。そしたら会社への信頼はなくなりますよね。会社は余裕がないんだなって思っちゃって、それは企業に跳ね返ってくる。
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