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日本人の「自画像」の書き換えが必要とされる理由 「経済大国」から「アニミズム文化・定常文明」へ

東洋経済オンライン / 2024年9月5日 11時0分

しかし「日本人論」がある意味でもっとも活発化し、その“興隆”を見たのは、やはり昭和の高度成長期ないしその前後の時期と言ってよいだろう。

なぜこのようになるかというと、当時の日本がまさにそうだったように、ある国が国際社会の中で何らかの意味で“頭角”を現わし、注目されるようになると、当然のことながらその国の特質やその背後にある諸要因についての議論が起こり、またその国内部においても、(そこで意識されている国際社会ないし他国との比較の中での)自らの特徴あるいは再定義をめぐる議論が活発になるのである。

ちなみにこれは当然日本に限ったことではない。たとえばアメリカもまた「アメリカ人論」の活発な国であり、そこでのキーワードの一つは「アメリカ的性格(American Character)」、つまり他国にはないアメリカ人ないしアメリカ社会の性格で、この話題に関する無数の著作が(特に1950~60年代頃を中心に)刊行され、さまざまな議論が行われたのである(この点について詳しくは拙著『エイプリルシャワーの街で――MITで見たアメリカ』および『脱「ア」入欧』を参照されたい)。

話題を日本人論に戻すと、日本人論がもっとも活発だった高度成長期ないしその前後の時代における、そうした論の内容面での特徴はどのようなものだったのか。

ここで日本人論として挙げられる著作の中で特に代表的なものを挙げるとすれば、それは以下のようなものとなるだろう。

・和辻哲郎『風土――人間学的考察』(1935年)
・ルース・ベネディクト『菊と刀』(1946年)
・中根千枝『タテ社会の人間関係』(1967年)
・土居健郎『「甘え」の構造』(1971年)

これらについてはすでにその内容を知っているという読者も多いと思うが、確認の意味でそれらの概要をごく駆け足でレビューしておこう。

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最初の和辻哲郎『風土』は、戦前に書かれたものなのでやや時代がずれるが、世界の風土を大きく「モンスーン(=主にアジア)」、「砂漠(=主に中東)」、「牧場(=主にヨーロッパ)」と分けたうえで、それぞれにおける人々の行動様式や世界観、宗教等のありようを描く内容だった。そして「モンスーン」に位置する日本について、その特質を「台風的な忍従性」とか「しめやかな激情」、家の“「うち」と「そと」”の区別の強さといった視点にそくして論じたのである。

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