「空き家を転々としながら暮らす」彼の快活人生 複数の拠点で暮らす「空き家ホッパー」の実態
東洋経済オンライン / 2024年9月6日 14時0分
酷暑が続く。夏の暑い時期だけでも涼しい高原リゾートでのんびりできないか。この夏、そんなことを思った人も多いだろう。実際、季節ごとにあちこちを移動して暮らす人が日本でも少しずつ増えている。しかも、空き家を利用して住居費を抑えつつ、行く先々で仕事を生み、地元に感謝されていると聞けば、どんな暮らしか、のぞいてみたくなるというものである。
【写真】嶋さんが春と秋を過ごす宮崎県の一軒家はまさに「ぽつんと一軒家」の風情だ
1カ月に日本各地十数カ所を移動することも
7月某日、恵比寿駅前で嶋啓祐さんと待ち合わせた。昼間の気温は平均で20度ほどという蓼科高原で週末を過ごすため、ピックアップしてもらうのだ。
北海道の友人から25万円で譲り受けたという軽自動車で登場した嶋さんは、夏はこれから訪ねる蓼科高原、春と秋は宮崎県諸塚村、そしてそれ以外の時期は23区西部の一軒家で暮らしている。
その合間には北海道から九州までのあちこちで農業の手伝いをしたり、美味しいものを探し歩いたりもしており、1カ月に日本各地十数カ所を移動していることも。いってみれば日本を股にかけた旅人のような暮らしである。
しかも、メインで滞在している住宅はいずれも空き家、あるいは空き家同然だったもので、住居費はどこもそれほどかかってはいないそうだ。
嶋さんがそんな暮らしを始めたのは2016年のこと。53歳で離婚後、妻にマンションと全財産を渡し、無一文となった嶋さんが最初にやったのが部屋探し。それも不動産会社に行くのではなく、友人たちに声を掛けた。
「誰か、安く、部屋を貸してくれないか」
【写真11枚】「家賃はほとんどかかっていない」。嶋さんが点々とする東京23区西部にある一軒家や地方拠点の数々
離婚とほぼ同時期に手放したものの、それまではビストロなど飲食店を複数経営、店が休みの週末には自分で料理をして友人たちと集まっていたこともあり、嶋さんの人間関係は驚くほど広い。出雲を始めとしたツアーを主催したり、2016年から勤務していた農業ITベンチャーの仕事で地方を回ってもおり、日本全国に友人知人がいる。
その呼びかけに荒川区にある不動産会社の友人が反応した。
「1年半後に取り壊しになる予定があるアパートがあるけれど、それでどう?」
そのアパートを出る頃にはまた、同じように友人たちに空き家になっている物件はないか、しばらく使う予定がない物件はないか、取り壊し予定の物件はないかと尋ね、今度は目黒区に転居した。結婚して地方に移住した女性が短期だけ貸してくれることになり、家具・家電から食器その他家財道具が一式揃った家に1年半住むことになったのだ。
現在は都内で「3軒目」の一軒家に居住
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