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贖罪で移民を受け入れたドイツが直面する苦境 中道を標榜するが、過激なポピュリズムに向かう人も

東洋経済オンライン / 2024年9月11日 16時0分

ナチスという“過去への贖罪”と、今、移民に仕事が奪われるという“目の前にある危機”の綱引き。この勝負は拮抗関係というより、現実味を帯びているぶん、後者に有利なのかもしれません。「ナチスの悪夢は歴史の授業で学んだけど、すごく昔のことだよね?」と。

旧東ドイツ出身の人の中には、統一ドイツになったにもかかわらず“安い労働力”として使われ、やがて移民に仕事を奪われて失業した鬱屈の中で、ポピュリズムに向かう人たちもいます。

「同じドイツ人なのに不公平だ」という人たちが、右派ポピュリズムと言われる政党「ドイツのための選択肢」を支持することもおおいにあるのです。

もちろん過ちの風化を食い止めようと国も対策を講じており、それが小選挙区比例代表併用の選挙制度。仮に過激な政党が出てきても、議席を得ることは容易ではありません。全体としては中道で多党、そんなドイツの政党を見ていきましょう。

大連立政権から誕生したメルケル首相

議院内閣制のドイツ連邦議会には、連邦参議院(上院に相当)と連邦議会(下院に相当)があります。

連邦議会は小選挙区比例代表併用制。小選挙区では個人に投票して最多票を集めた候補者が当選。連邦議会の全体の議席数は政党名への投票で決まります。

この際、議席を取れる政党には「小選挙区で3名以上の当選もしくは比例代表で5%以上の票を獲得している」という条件があります。この条件付けによって、ナチスのような過激政党の登場を防ぐとともに、やたらと小さな政党が増えない工夫をしているのです。

また、「Wahl-O-Mat」(ヴァールオーマット)というオンラインの支援システムが提供されており、有権者は各政党の政策・立場を知ることができるようになっています。

ドイツの国家元首は大統領ですが形式的なもので、実権は行政権をもつ連邦首相にあります。

議会の過半数を得れば首相に――しかしドイツではこれがなかなか難しい。一強という政党がないため、連立政権が多くなっています。

群雄割拠の政党のなか、二強と言えるのが保守のキリスト教民主同盟と、リベラルの社会民主党。どちらも政権を担った経験のある有力政党ですが、メルケル政権ではこの二強の大連立政権だった時期が長くありました。

あえて右派政党を選んだメルケル

キリスト教民主同盟と、社会民主党を中心に、ドイツの政党を見ていきましょう。

キリスト教民主同盟は、ドイツ帝国時代(1871〜1918年)の中央党がルーツです。「小さな政府(「個人の自由を尊重するから、公共サービスや福祉は最小限でいい。教育も経済活動も、実力本位で国民がそれぞれ頑張ればいい」という考え方)」を目指す伝統を重んじる内向きな政策、“昔ながらの保守”という趣でした。

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