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贖罪で移民を受け入れたドイツが直面する苦境 中道を標榜するが、過激なポピュリズムに向かう人も

東洋経済オンライン / 2024年9月11日 16時0分

現在は中道右派と見なされており、キリスト教的な価値観を重視はしているもののキリスト教を必ずしも前面に押し出しているわけではありません。

しかし、保守的な政党の名前にキリスト教という宗教名がついているのは、伝統的な主張にはキリスト教的な価値観が結果として反映されていることが多いためであろうと私は考えています。

欧州におけるキリスト教という存在の大きさを象徴しているようです。なお、政教分離を重視するフランスの国民議会には、宗教名がついた議席を持つ政党はありません。

社会民主党は19世紀に誕生した伝統ある政党で、どちらかというと「大きな政府(教育、福祉、医療、環境保護、経済活動など、国民一人ひとりの生活に補助金や規制を通じて政府が介入)」を目指しています。福祉に力を入れるリベラルで、対外的な経済政策としては国際協調路線です。

私はこの2つの連立政党から、長くドイツの顔となったメルケル首相が出たことを“中道ドイツの象徴”のように捉えています。

アンゲラ・メルケルは旧東ドイツの出身の牧師の娘です。東西が壁で分断されていた冷戦時代に育っていますから、社会主義的な影響を受けていることは間違いありません。ベルリンの壁が崩れる35歳までは物理学者でしたが、政治思想は社会主義的であっても不思議はないでしょう。

ところが政治活動を始めた彼女が入った政党は、キリスト教民主同盟。これは東ドイツにあった別の政党ですが、統一ドイツでも同じ名の保守政党を選びました。

彼女自身の卓越した能力を考えれば、どの政党でも政治家として名をなしたでしょうし、社会民主党に入ることも簡単だったでしょう。“ドイツ左翼の期待の新星”にもなれたはずです。

ただし、東ドイツ出身で左派の政治家となれば、色がつきすぎて警戒する人も大勢います。右も左も両方とも、ずっと広いドイツの支持を集めて頭角を表すことは、左の政党にいては難しかったはずです。

そこであえて右寄りの政党に入り、コール首相やさまざまな人に才能を見出されていった。もしかしたらなかば“自分の本音”を隠しながら、ドイツ初の女性首相となり、16年間も国の代表を務めた――これはある政治学者の分析で、いささか飛躍しすぎかもしれませんが、私は頷ける気がしています。

メルケル首相は移民にも寛容でしたし、東日本大震災の後、いち早く原発廃止を宣言するなど環境問題にも敏感。リベラルに見える決定でした。右派らしいところは安全保障政策で、トータルで“ザ・中道”になるのです。

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