なぜ今、企業経営に「倫理」が求められるのか 「パーパス経営」の理想と現実をつなぐ判断軸
東洋経済オンライン / 2024年9月25日 9時30分
何が間違っているのだろうか? そもそも、「ガバナンス」という発想そのものに、ボタンの掛け違いがあるのではないだろうか?
日本語では「統治」と訳される。しかし、その言葉自体、ただでさえ「大日本帝国統治時代」を想起させてしまうほど、恐ろしく前時代的だ。しかも、「上から目線」であることは一目瞭然。
自由意志のある人間の行動は、外から統治できるものではない。統治ではなく「自治」(セルフガバナンス)こそが、向かうべき方向である。そのためには、規制で縛るのではなく、1人1人が原理原則に基づいて自律的に判断し、良い行動をとるような組織風土を醸成することこそが、求められている。
エシックス経営の本質とは
そのような次世代モデルを、筆者は「エシックス(倫理)経営」と呼ぶ。そこでは、いかに社員が倫理観を研ぎ澄ませ、自らが正しいリスクをとって行動できるかが問われる。
ただし、ここでも「エシックス」の本質を、正しく理解しておく必要がある。それは、「間違ったことをしない」という消極的な意味ではなく、「世の中にとって良いこと(ソーシャルグッド)」を積極的に行うという、より前向きな姿勢を意味する。言い換えれば、守りだけでなく、攻めの姿勢が求められるのである。
一方、その際に勢い余って、社会秩序を損なってしまうリスクもある。そのときに初めて、正しい「コンプライアンス意識」が本領を発揮する。アクセルとブレーキの両方を、社員1人1人が自らの中に内蔵していることこそが「自治(セルフガバナンス)」の本質であり、エシックス経営の一丁目一番地なのである。
したがってエシックス経営は、冒頭で述べたような不正・不祥事の撲滅という消極的な理由だけに求められるものではない。むしろ、ありたい未来に向けて、正しいリスクを積極的にとっていくときにこそ、本領を発揮する。
「額縁パーパス」に陥る理由
昨今、「パーパス経営」が世の中に広がり始めている。これは3年前に『パーパス経営』を上梓して火付け役の1人となった筆者としては、大変うれしい話だ。
しかし実態を見ると、素晴らしいパーパスを掲げているだけに終わってしまっているケースが少なくない。多くの場合、経営者も社員も、パーパスを日々実践するまでに自分ごと化できていない。そのような残念な光景を、筆者は「額縁パーパス」と揶揄している。
なぜ、このような結果に陥ってしまうのか? よく考えてみると、実はそこには大きな壁があることに気づかされる。
この記事に関連するニュース
-
「行政機関・公務員との付き合い方」と題して、森・濱田松本法律事務所 弁護士 今泉 憲人氏によるセミナーを2024年11月7日(木)に開催!!
PR TIMES / 2024年9月26日 18時15分
-
KPMGコンサルティング、「Future of HR (人事の未来)2024-25」を発表
PR TIMES / 2024年9月18日 11時0分
-
i-PRO AI倫理委員会を設立し、AIガバナンス体制を構築
PR TIMES / 2024年9月10日 14時15分
-
なぜ、パーパス設計は失敗するのか? 経営理論に学ぶ「4つのフェーズ」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月10日 7時15分
-
保険業界が抱える5つの問題とAIが果たす役割
Digital PR Platform / 2024年9月9日 11時23分
ランキング
-
1ソフトバンク、「医療AIに猛進」の知られざる内幕 孫社長が事業立ち上げを託したキーマンに直撃
東洋経済オンライン / 2024年9月27日 8時0分
-
2年金「月14万円」…手取り30万円労働者の「残酷すぎる老後」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月24日 18時30分
-
3任天堂も激怒「酷似ゲーム」会社が犯した痛恨失態 特許権侵害で訴訟され…出した"声明"にツッコミが殺到
東洋経済オンライン / 2024年9月25日 18時30分
-
4豊田章男会長の「信任率急落」の衝撃…トヨタ業績絶好調でも株主の3割がノーを突きつけた本当の理由
プレジデントオンライン / 2024年9月27日 10時15分
-
5国内最大手「真っ赤なヒゲ親父」のオートバイ販売店 米投資ファンド買収で今後の経営は大丈夫か?
乗りものニュース / 2024年9月27日 9時42分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください