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なぜ今、企業経営に「倫理」が求められるのか 「パーパス経営」の理想と現実をつなぐ判断軸

東洋経済オンライン / 2024年9月25日 9時30分

パーパスは、未来の「ありたい姿」である。いわば「きれいごと」だ。それ自体はとてもワクワクするものの、当然のことながら現実離れしている。一方、現実は制約だらけだ。経営者や社員は、きれいごとでは済まされない現実の前で、抜き差しならない決断を迫られる。

経営レベルでいえば、社会への貢献と自社の利益のどちらに重きを置くのか。今期の利益と将来の利益のどちらを優先するのか。限られた経営資源を、どこにどれだけ振り分けるのか――いずれも、「正しい答え」のない問いである。

実務レベルでいえば、どの顧客層にフォーカスし、どの顧客層を切り捨てるのか、どの機能を内製し、どの機能を外注するのか、どの業務に注力し、どの業務は断捨離するのか――いずれも、現場レベルで、リスクを伴う正しい状況判断が求められる問いだ。

理想と現実、未来と現在には大きな乖離がある。パーパスを実践(プラクティス)するには、このギャップを埋める判断軸が求められる。そのような判断軸を、筆者は「プリンシプル(行動原理)」と呼ぶ。パーパスを日々のプラクティスに結びつけるためには、このプリンシプルの確立こそが、カギとなるのである。

プリンシプルは、次のような本質的な問いかけに対して、自問自答する際の判断基準となる。

・どのような価値を最優先するのか。
・何については妥協を許さないのか。
・決断する際に何に配慮すべきか。
・誰に対して、どのような責任を担うべきか。
・どのようなリスクに賭けるのか。

多くの企業には、「行動規範(Code of Conduct)」が整備されている。しかし、しっかり読みこなしている経営者や社員は、皆無と言ってよいだろう。もっとも、たとえ読みこなしたところで、ここに挙げたような本質的な問いへの答えは出てこない。

ルールからプリンシプルへ

近年、金融の分野では「ルールベースからプリンシプルベースへ」が世界的な潮流となっている。VUCA時代には、あらゆることを想定してルールで縛るより、各事業者がプリンシプルに従って正しく判断させるほうが、はるかに実効力があるからだ。

普通の社会人であれば、善悪の判断がぶれることは、まずないだろう。しかし、厄介なのは「グレーゾーン」だ。何が正しいのかは、はっきりしない。

リスクとリターンは、コインの両面だ。リスクを避け続けていると、リターンはどんどん小さくなっていく。「不作為のリスク」と呼ばれるものだ。一方、顧客はもちろん、社会や将来世代のことを考えると、そのリスクをとるべきかどうかは、大変悩ましい。

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