「便利な製品」を卒業したアップルが目指すもの 新製品が「何も変わっていない」という人たちへ
東洋経済オンライン / 2024年10月6日 9時0分
先月の発表会で、iPhoneシリーズやApple Watchなどアップルの人気製品群が一新された。新発表の製品を見て「何も変わっていない」、iPhoneを見て「よくなったのはカメラだけ」と言う人たちもいる。でも、実はコレ、毎年繰り返されている不毛な議論だ。
新たなiPhoneは「新駅」のようなもの
2007年の初代iPhoneからアップルはずっと製品の基本品質と総合的バランスで勝負をしている。ガジェット好きの人を一喜一憂させる大掛かりな仕様の変化は2〜3年に1度のペース(今回追加されたカメラ操作は、それに当たると思う)。
新製品でそうした機能以上に力を入れているのが基本性能だ。つまり、目に見える部分では画面表示性能とカメラの画質の向上、見えにくい部分ではプロセッサの性能向上に焦点を絞っている。
というのも、アップルはプラットフォーマー企業で、その製品に魅力を加えているのはアプリやアクセサリを作る周辺の開発者たちだからだ。アップルが一時的な売り上げアップを狙って、ギミック的な仕様変更を行うと、それによって開発者たちが振り回されることになる。
だから、アップルはつねにやり過ぎないように注意しながら、開発者たちが新たなチャレンジや前進ができるように、土台のブラッシュアップに努めている。
いい土台としての新作iPhoneの魅力はなかなかわかりにくい。例えて言えば、まだ開業したばかりで周囲に何もない新しい電車の駅のようなものだ。
しかし、実際にこの駅ができたことで人流が変わり、賑わいや新たな文化が生まれ、地の利を生かした商業施設や文化施設ができて街としての魅力が醸成されるように、新しいiPhoneもそれが出ることによって新しいアプリが登場して製品の魅力が醸成されていく。
新たなiPhone16もAI性能を大幅に向上させたプロセッサや、いつでも簡単にカメラを呼び出せるデザインといった特性を生かしたアプリが増えて初めて、本来の魅力が伝わる。ただ、未来に向けてのポテンシャルの話なので、想像力があまり働かない人には「何も変わっていない」と映ってしまう。
だが、せめて製造業の関係者にはそうした表層だけを見ずに、いずれアップルを追い抜けるように、もっと深い部分を見て学び、一刻も早く中長期の戦略に投資し始めてもらいたい。
というのも、ここ数年、アップルが小さなギミックよりも、はるかに多くの労力を割いているのは、大企業にしかできない人々の価値観や社会の仕組みさえも変えてしまいそうな「大きな枠組み」であって、それらは一朝一夕ではなし得ないからだ。
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