「便利な製品」を卒業したアップルが目指すもの 新製品が「何も変わっていない」という人たちへ
東洋経済オンライン / 2024年10月6日 9時0分
「呼吸の乱れ」を診断する機能も、そうやって長い年月を経た研究が身を結んだもので、他社が一朝一夕に真似できる機能ではない。
アリゾナ大学ヘルスサイエンスの睡眠・サーカディアン・神経科学センターのサイラム・パルサザラシー所長は、「睡眠時の呼吸の乱れの存在を確実に特定できるようにすることは、睡眠時無呼吸のような、診断が見過ごされがちで深刻な疾患を発見するために役立つ。これは公衆衛生の改善において大きな前進だ」と評している。
十数億人を助ける「AirPods Pro 2」
もう1つ質問しよう。
「日本ではおよそ1500万人で世界では十数億人」ーーこれは何の数字だろう?
答えは難聴者の推定人数だ。耳の聞こえの悪さは年長者の問題だと思っている人も多いが、実は日々、大音量で音楽のライブを聴いている人など若者でも少なくない。耳の聞こえが悪くなると、そのうち何度も聞き返すのが辛くなり、孤立感を生むようになる。
アップルのヘルスケア担当副社長で医学博士でもあるサンブル・デサイ氏によると「脳が音を処理しないことに慣れて衰えてしまう問題もある」。その結果、認知能力の衰えが加速するという。「それにもかかわらず80%の人は聴力テストを受けていない」(デサイ博士)。
まもなくリリースされる無料のアップデートで、アップルはAirPods Pro2に「耳の健康」に関する一連の新機能を追加する。その1つが「ヒアリングチェック」と呼ばれる聴力テストの機能で、純音聴力検査と呼ばれる標準の臨床的アプローチに基づいており、厚労省も認可をしている。
左右片耳ずつ行われるテストで、AirPods Pro2を通してさまざまな周波数の音が再生されるので、それが聞こえたら画面をタップするという極めて単純なもの。数分間で完了し、診断結果が表示される。
「難聴の可能性がある」と診断された場合は、AirPods Pro 2を使って得られたテスト結果をPDFとして出力して医師に見せることもできる。どの周波数の音がどれくらい聞こえているかをグラフにしたものだ。
難聴を予防するための技術も
多くの人にとって縁遠い聴力検査が受けたければ1日に何度でも無料で受けられる、というだけでも画期的だが、機能はそれだけにとどまらない。
AirPods Pro 2では、そもそも難聴を予防するための技術として毎秒4万8000回のスピードで周囲の音を検知して、耳にダメージを与えそうな大音量の場合には、音の特性を損なわずに音量を下げて耳へのダメージを抑える。
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