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父急死、母子家庭から私大医に進んだ彼女の顛末 『ブラック・ジャック』に憧れた結果とその費用

東洋経済オンライン / 2024年10月8日 10時0分

『夢を叶えられる』という意味では、奨学金は必要な制度だと思います。ただ、ここまで利子を付ける必要あります?(笑)(写真はイメージです:EKAKI/PIXTA)

これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。

たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。

そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「小学生の頃に放送していたアニメ『ブラック・ジャック』(2004〜2006年/日本テレビ系)を見て、『わたしもブラック・ジャックになりたい!』という一心で育ちました」

【写真】日本学生支援機構と裁判、「奨学金1200万円」36歳彼の願い

手塚治虫による名作マンガ『ブラック・ジャック』に影響を受けて、医者を志したという話はよく聞く。平成生まれの杉村真希さん(仮名・25歳)もご多分に漏れず、神の手を持つ天才外科医に感化され、医者という職業に憧れた。

中学生のときに父が急死

杉村さんは神奈川県出身、きょうだい構成は兄と妹。家族5人で順風満帆な生活を送っていたはずが、父親が中学生のときに急死してしまう。

「父はリストラされたこともありましたが、普通に生活は送れていました。リストラ後も大きな会社に勤めて、家にも早く帰ってきてくれたのですが、わたしが中学3年生のある日、突然……。今思えば少し前から狭心症症状があったのではないかと思いますが」

自らの死期を予期していたわけではないが、杉村さんの父親は亡くなる前に家を購入していた。そして、自身が亡くなり、ローンの返済義務がなくなったことで、母子家庭となった杉村一家はその家に住み続けることができた。

また、中学3年生という高校受験を控えた時期の不幸ごとではあったが、幸い杉村さんは県立の一貫校に通っていたため、受験の心配はいらなかった。

「兄が高校受験をしていたので『わたしも受験したい!』という理由で中学受験しました。兄は私立高校でしたが、わたしは親に学費の高い私立はダメと言われ、受験校は公立を選びました。とにかく、わたしはブラック・ジャックになりたかったので、中学校から高校に上がるまでの受験の必要性を感じられず、6年間一括で勉強できる環境のほうが苦痛もないだろうと考えたのです」

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