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「さらばモデル年金」誰も知らない財政検証の進化 女性活躍推進、子育て支援は重要な年金政策だ

東洋経済オンライン / 2024年11月1日 19時30分

専業主婦世帯でなく共働き世帯を対象とした将来の年金給付見通しの提示はすでに始まっている(写真:VIOLA/PIXTA)

この記事はNHK番組『視点・論点』(2024年7月30日放送)用に準備した10分用読み上げ文章に、倍ほどに補筆したものである。

2024年7月3日に、公的年金保険の第4回財政検証の結果が発表されました。これは、5年に一度行われる、年金の健康診断と言われています。

健康診断である以上は、その診断結果が、すぐに、自分に役立つと思いがちですが、実はそうではないところが、財政検証を理解することを難しくしてきました。

なぜ、理解することが難しかったのでしょうか。そして、実はその難しさを解消する努力は以前から続けられ、今回はその意味で大きな前進となる試算が行われました。本日はこういった点について説明したいと思います。

財政検証の理解が難しい理由

まず、健康診断なのに、なぜその理解が難しいのか?

その理由は2つのキーワード、「所得代替率」と「モデル年金」にあります。

2004年の年金改革で、日本の公的年金は、保険料(率)を固定した下で、財政のバランスがとれるように給付が自動的に調整されていく仕組みを導入しました。この時政府は、年金の給付水準に下限を設けることにし、法律の中に「所得代替率が次の財政検証までに50%を切る場合には」制度を見直すという文言を書き込みました。

この、「所得代替率が次の財政検証までに50%を切る」かどうかを、いろんな前提をおいて5年に一度確認するのが財政検証です。この検証を法定検証と呼んでおきます。

では、この「所得代替率」とは何か?

その定義も法律で決められています。夫婦2人分の年金額が現役男性1人の平均賃金に対する比率のことです。

夫婦の世帯類型も決まっていて、夫は男性の平均賃金で40年間保険料を拠出し、妻はずっと専業主婦。そして2人とも65歳から年金を受け取るという想定です。この想定で受け取る年金額のことが「モデル年金」と呼ばれてきました。

このモデル年金の将来の所得代替率が法定検証で焦点となります。その結果を自分の年金に置き直す際には、相当の注意が必要なのですが、長く、そうした配慮が欠け、財政検証のたびに誤解と混乱が生じていたのも事実です。

というのも、繰り返しになりますが、モデル年金とは40年間働いて保険料を納めたサラリーマンの夫と、ずっと専業主婦だった妻の世帯が受け取る年金です。しかし今は法律上、65歳まで働き続けることができますし、65〜69歳の男女計の就業率も50%を超えています。また共働き世帯のほうが専業主婦世帯よりもはるかに多い。みんなモデル年金とは関係ありません。

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