半導体のラピダスはこのままでは99.7%失敗する 成功するためにはいったい何をすればいいのか
東洋経済オンライン / 2024年11月16日 8時30分
そこで割が合わなくなってくると、違う行動パターン(かつ意識するリスクの軸が異なる、金銭的リターンよりも、学問的、名誉的リターンを目指して、画期的な発明に懸ける)をとる大学や大学研究者に近づき、提携をしまくって、リスクとリソースを分散する。こうしたことが標準的な企業戦略パターンとなった。
政府が「民間企業に勝てるはずがない」ワケ
しかし、ラピダスには、もっと根本的な欠陥がある。第3に、戦略がはっきりしない。そもそも目的がはっきりしない。研究なのか、開発なのか、製造なのか。雇用なのか、地域開発なのか、日本経済成長なのか、それとも経済安全保障なのか。
さらに人材育成まで盛り込んでいるが、最優先の軸、目的が何かはっきりしていなければ、意思決定はできないし、ましてやラピダスの名の由来でもある「早い意思決定」など、絶望的である。
さらに、「オールジャパン」といえば聞こえはいいが、利害関係者が多すぎる。このプロジェクトの主導者、政府(経済産業省および、それに乗った政治家)ですら、前述のように目的がはっきりしていないのではないか。その状況で、さらにすべての利害関係者を巻き込み、必然的に同床異夢となるから、さらに大混乱である。前に進むはずがない。そして、前述のありとあらゆる要素により、前に進んでも、成功するはずがない。絶望的である。
そもそも、半導体のような先端技術かつ将来有望な分野で、21世紀においては、政府が民間企業に勝てるはずがない。最先端技術においては、意思決定のスピードが最重要であるが、政府の意思決定は原理的に、遅くならざるをえない。
利害関係者が多すぎるし、税金であるから、国民への説明責任も伴う。政治家、政府関係者はリターンよりも責任、手柄が重要である。スピードはどんなにがんばっても民間企業にかなわないし、リターンを追う企業と手柄を追う政治家では、そもそも目的が違うから、利益がすべての最先端の競争では、勝てるはずがないし、そもそも勝とうとしていないから、ゲームにすら参加できていない。
しかし、政府はだめだ、というだけでは前に進めない。
政府主導のプロジェクトが勝っていた4つの理由
逆に考えてみよう。21世紀ではだめなのに、20世紀までは、政府主導のプロジェクトが民間企業に勝てることがあったのは、なぜだろうか。可能性は4つある。
第1に、民間よりも政府のほうに優れた人材がいること。民間企業には見えない大局や未来が見えて、かつそれを実行する実力がある人材が政府に集まっている、あるいは政府が集められること。
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