2029年に最低賃金1500円は「余裕で可能」な根拠 最賃の引き上げは「宿泊・飲食、小売業」の問題
東洋経済オンライン / 2024年11月19日 11時30分
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼の著書『給料の上げ方――日本人みんなで豊かになる』では、日本人の給料を上げるための方法が詳しく解説されている。
「いまの日本の給料は、日本人のまじめさや能力にふさわしい水準ではありません。そんな低水準の給料でもガマンして働いている、その『ガマン』によって、いまの日本経済のシステムは成り立っています。でも、そんなのは絶対におかしい」
そう語るアトキンソン氏に、これからの日本に必要なことを解説してもらう。
本記事のまとめ:国民を安く使い捨てる悪習からの脱却
石破内閣は、2029年までに最低賃金を1500円に引き上げることを目指すと発表しました。
【データ】最低賃金を1500円に引き上げると、企業の負担はどれだけ増えるか?
人口減少が進む中では、賃金の増加が物価や社会保険料の増加を上回らないかぎり、日本経済は成長しません。最低賃金を引き上げることは、労働者の貧困を持続的に解消するために、政府が直接取り得る唯一の手段です。
また、最低賃金が1500円になった場合、今の高卒の初任給はおろか、大卒の初任給も上回りますので、経済効果としては減税より極めて大きい影響を与えます。
私の試算によると、2029年に最低賃金1500円を目指して毎年同じ金額ずつ均等に上げる場合、企業の毎年の追加負担は1.4兆円と予測されます。2029年に最低賃金が1500円になった場合、今よりも7.1兆円の負担増となります。
最低賃金で働く人のうち、大企業に勤めている人が2割を占めるため、1.4兆円のうち8割が中小企業の負担となりますが、これは中小企業の2023年度の人件費の0.9%を占めるだけです。たとえ1500円に引き上げても、増加率は4.8%にすぎません。
さらに、2023年度の中小企業の経常利益は11.2%増加、金額にして2.6兆円増え、付加価値も14.7兆円増加しているため、中小企業にはこの負担増に対応できる十分な余力があります。
2023年度は、物価上昇により企業も賃上げが難しいとされていましたが、実際には大企業も中小企業も最高益を更新しています。第2次安倍政権以降、増益は大企業に限らず、中小企業の利益や内部留保も大幅に増加しているのが現状です。
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