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57歳「鬼軍曹」が挑む"世界一過酷なレース"の中身 猛獣に狙われ、不眠不休の極限状態…そこで真理を見つけた

東洋経済オンライン / 2024年12月20日 9時30分

田中さんはこのアドベンチャーレースの日本における第一人者である。178センチ、63キロ、体脂肪10%。還暦間近でありながら一線級のアスリートで、妥協なき厳しさゆえに「鬼軍曹」の異名を持つ。彼のアドベンチャーレーサー人生を取材した。

協調性のなさがネックに

自己中心的、自己主張が強い、協調性ゼロ。子どものころから田中さんはそんな性格だった。同級生との衝突は当たり前で、取っ組み合いに発展するのも日常茶飯事だった。クラス全員を敵に回したこともあったが、どこ吹く風。人からどう思われようとまったく気にならない、鋼のメンタルの持ち主である。

中学卒業後は高等専門学校(高専)に進み、友人に誘われてオリエンテーリング同好会に入部した。オリエンテーリングとは、山の中で地図とコンパスを頼りに、チェックポイントを通過してゴールを目指すというもの。宝さがしゲームみたいで面白そう、という軽い気持ちで始めたが、徐々にどっぷりハマっていった。

「走るだけじゃなくて頭も使うんです。走るのが早くてもコースを間違えるとタイムロスになるので、ゆっくり正確に走ったほうが早かったりします。走力や体力だけでは勝負がつかないところが奥深くて面白いなと」

高専を卒業後、化学会社に就職して研究職をしながらも、オリエンテーリングは続けていった。1993年、大規模なトレイルランニング大会で優勝。そのことがスポーツ新聞に掲載され、田中さんの運命を変えることになった。イベントプロデューサーから連絡があり、ボルネオ島で開催されるアドベンチャーレースに、タレントの間寛平さんと出場しないか、と打診されたのだ。

未知の冒険レースへのチャレンジに胸が高鳴ったが、気がかりだったのが、チーム競技という点。ひとりで自由に動けるオリエンテーリングと違い、アドベンチャーレースは前述の通り、チームで挑まなければならないからだ。協調性のない自分に務まるだろうかと迷ったが、それでも興味のほうが勝り、出場を決めた。

温厚な間寛平さんをキレさせた

メンバーは男性4人、女性1人の合計5人。リーダーは寛平さんだが、実質的にチームを牽引する役割は田中さんだった。

そしてレースがスタート。田中さんは相手の気持ちに配慮せず、正論をひたすらぶつけるという、子どものころの性格そのままにチームを牽引していった。それが続くうちに、弟子にも怒らないといわれる温厚な間寛平さんが、「いちいち命令すんな!」とぶちぎれた。

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