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57歳「鬼軍曹」が挑む"世界一過酷なレース"の中身 猛獣に狙われ、不眠不休の極限状態…そこで真理を見つけた

東洋経済オンライン / 2024年12月20日 9時30分

心身ともに極限状態に陥るため、外面など簡単にはがれ、メンバーたちはむき出しの人間性で接しないといけないのだ。

個々の能力がアスリートとしていかに高くても、成績には直結しない。むしろ1人ひとりは平凡でも、チームワークがよければ掛け算式に能力が膨れ上がる、それがアドベンチャーレースなのだという。

「鬼軍曹」と呼ばれるゆえん

ベトナム戦争が題材の『フルメタル・ジャケット』(1987年)という映画がある。アメリカ軍のハートマン軍曹が、新兵たちを徹底的にしごいていく場面が印象的な作品だ。体罰や暴言は当たり前で、人格破壊するまで追いつめ、新兵は徐々に狂っていく……という内容で、ハートマン軍曹はまさに「鬼軍曹」の象徴である。

田中さんも同じ異名で呼ばれるが、彼はメンバーを人として尊重し、向き合って対話をし、信頼関係を築こうとしていく。人格者で理想的なリーダーにしか思えないが、鬼軍曹と呼ばれるゆえんは何だろうか。

田中さんは、自身が好んで使うという「自分に厳しく、人に厳しく」という言葉を挙げる。

「普通は『自分に厳しく、人に優しく』じゃないですか。けれどチームにおいて、弱い人をみんなで助けようとすることはダメだと思っています。なぜならチーム全体のレベルが、その人に合わせて下がってしまうから。そうじゃなく、弱い人をみんなで支えて、チーム力を上げる。それが『人に厳しく』なんです」

優しくすることは罪だと思う、と田中さんは続ける。つらそうだからと簡単に手を差し伸べることは、本人が主体的に努力し、挑戦や成長する機会を失わせてしまうからだ。サポートやアドバイスや叱咤激励しつつ、あくまで自分の足と意思で進むからこそ、限界を超えることができる。そこへ導くのが「鬼軍曹」なのである。

「挑戦しようぜ、とメンバーに呼び掛けるのが“鬼軍曹スタイル”の根本なんです。俺はやるよ、お前らもやるならついて来いよ。ただし、俺は優しくするんじゃなくて、頑張らせる。そして素晴らしい体験を一緒にしようぜ、挑戦してつかみ取ろうぜ、って」

その過程で、厳しい言葉をかけることや、高い成果を求めることもある。だからこそ、ちょっとやそっとのことでチームが崩壊しないように、ゆるぎない信頼関係や共通の目標が絶対に必要なのだと、“鬼軍曹”は笑顔で話した。

アドベンチャーレースにかかる費用

アドベンチャーレーサーの金銭事情はどうなのか。海外レースの賞金は数千万円のこともあるが、基本的に上位チームで分配されるため、成績によっては一銭も入らないこともある。さらに海外のレースに1回参加すると、渡航費や滞在費などで約500万円もかかる。田中さんのチームは、平均で年3回出場しているので、単純計算で1500万円が必要だ。

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