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57歳「鬼軍曹」が挑む"世界一過酷なレース"の中身 猛獣に狙われ、不眠不休の極限状態…そこで真理を見つけた

東洋経済オンライン / 2024年12月20日 9時30分

普段、田中さんは林業や山での測量、レースなどに帯同して撮影するランニングカメラマン、地図読みの講習会の講師、講演などで収入を得ている。ただ、定職ではないため、収入は決して安定していないという。後援会やスポンサーたちに支えられているものの、カツカツであるのが実情だと明かす。

それでも、人生をかけてアドベンチャーレースに取り組む意義を、「レースを通じて学んだことを社会に還元できるから」と続ける。

「アドベンチャーレースって、一般社会ではありえない環境ですが、社会の縮図でもあります。チームで困難にぶつかったときどうするか、僕らは極端な例で経験しているだけで、結局は同じなんですね。ビジネスの世界も不確定要素が多く、何が起こるかわからない。レースそのものなんです。

だからこそ、参考になるようなことを提供できるかもしれない。そのために、自分たちの弱さや醜さをさらけ出して、失敗も包み隠さず見てもらう、格好悪いチームでいようと決めています」

話を聞きながら、アドベンチャーレースは本当によくできた仕組みだと痛感する。性別も性格も体力も得手不得手も異なるメンバーたちを、何が起こるかわからないレース会場に送り出す。極限状態の中、アクシデントにどう対処するか、意見をどうまとめるか、どんな決断をするか、などが試される。

こう言っては何だが、考案した人はなんて意地悪なのだろう! 参加する人も参加する人で、やっぱり「全員クレイジー」だ。

若い人には上に行ってもらいたい

57歳で現役バリバリの田中さんだが、引退することをひとつの目標にしている。後進を育て、自分が抜けたほうが強いチームになると判断したら、身を引くつもりだという。もっとも、当面はそうなりそうにない。

「若くて体力はあるけど、現場で生かせていない、無駄な力を使いすぎている、というトレーニング生が多いんです。僕は経験でごまかせている部分が大きいから、まだ抜けられない。若い人には、早くどんどん上に行ってもらいたいですね。そうしたら、僕はマスターズチームを作って、新たなチャレンジをするのも面白いかな」

取材を終え、そういえば「アドベンチャー」とはどんな意味なのだろう、と辞書で調べてみた。「冒険」「探検」のほか、「わくわくする体験」「困難な状況に立ち向かいながら成長するストーリー」「人生の道のり」などと書かれている。田中さんが話してくれた内容と見事に一致した。

これからもレースを通じて、またレーサーとしての生き方を通じて、我々にどんな冒険譚を届けてくれるのか、楽しみでならない。

【写真を見る】危険すぎる…! 道なき道をいき、極限状態まで追い込まれるアドベンチャーレースの様子(14枚)

肥沼 和之:フリーライター・ジャーナリスト

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