92歳女性が「老人ホーム入居の夢」をあきらめた訳 老いの現実を知り、上手に付き合うためのコツ
東洋経済オンライン / 2025年1月2日 7時0分
人生100年時代がやってきました。長い老後をどのように過ごせばいいのでしょう。
最期まで前向きに生きるためには「老いゆく自分を客観的にみつめ、受け入れること」「視野を広げて自分の置かれている状況、社会的な状況を知ること」この2つが大切だという、評論家の樋口恵子さん。現在92歳の樋口さんが、日々感じていることや実践していることを『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』から3回に渡ってご紹介します。
1回目は「老いの現実を知り、うまくつき合うワザ」を考えていきます。
80代半ばを過ぎるとみんなヨタヘロになる
2~3世帯同居の大家族が激減し、もともと1人世帯だったり、夫婦で暮らしていてもどちらかが亡くなったりと、さまざまな事情により1人で暮らす高齢者が珍しくない時代になりました。
ひと昔前なら周囲の人に、「1人暮らしは寂しいでしょう」と言われたものですが、いまは当たり前過ぎて同情もされません。
そして、その自立した1人暮らしにも、やがて限界がやってきます。92歳になった私の実感でいえば、75歳からの後期高齢者のなかでも、80代半ばまでの前半の老いと、それ以降の老いとでは、体の状態がだいぶ違うのです。
私は50歳のときに右膝を強打して、それが治りきっておらず、外出のときにはサポーターをつけています。そうすると調子がよいのです。70代までは国際会議にも出かけたし、国内外の旅行には何度も行き、なんら不自由はしていませんでした。
ところが、80歳を過ぎた頃からだんだん怪しくなってきたのです。それでもまだ、講演を頼まれれば、1人で行く元気がありました。
そんなある日、私が育った東京の練馬区で講演会があり、帰りに地元の友だち数人で集まることになりました。すると、「足が悪くて歩けない」、「老いた夫の病院のつき添いがある」などの理由で、参加できない人が何人もいたのです。「みんなヨタヘロ期に入ったんだ」と思いました。
その話を、介護の現場に詳しい広島の社会学者、春日キスヨさんにしたら、「80代半ばであれば、それは当たり前。なのに、本人も家族も老化への対応をまったく考えていないことにあきれ果てる」といわれました。
体の老化と家の老朽化は同時にやってくる
自分の老いを自覚させられたのは85歳の夏。体調を崩したのをきっかけに食べられなくなったのです。病院で診てもらうと低栄養といわれ、体力もかなり落ちていました。
前年に、家を建て替えたことも影響したのでしょう。築40年を過ぎた前の家はあちこちにガタがきていました。
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