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膀胱全摘出「ロボット手術」を受けた正直な感想 4本アームの「ダ・ヴィンチ」はSF世界から来たようだった

東洋経済オンライン / 2025年1月10日 8時30分

「膀胱を摘出する際に直腸を傷つけてしまう可能性だってあるよな」
考え出したらきりがない。

いつまでもネガティブに考えていても仕方がないので、スマホでショパンやラフマニノフのピアノ曲を聞いて心を落ち着かせる。そういえば前日の夕方から絶食だった。18時過ぎになると病室の他の患者たちに夕食が運ばれてくる。こういう日に限っていい匂いが立ち込める。

10月29日。いよいよ手術当日を迎えた。朝いちばんに髭を剃って手術着に着替える。家族がやってきて、励ましの言葉をかけてくれる。さあ、時間だ。ストレッチャーに移されて手術室に向かう。手術室の前で家族と別れ、いざ部屋の中へ。

目の当たりにしたダ・ヴィンチは意外と大きかった。SFの世界みたいだ。手術の前に麻酔をかけられる。まずは局所麻酔だ。「体をエビのように丸めてそのままにしてください」との指示に従い、窮屈な姿勢を維持。看護師さんが押さえつけてくれている。

腰のあたりに細い麻酔の針が刺さっていく。次に姿勢を変えて手術台の上に移動する。まさにまな板の上のコイだ。酸素吸入器が口に付けられ、全身麻酔の準備が始まった。記憶はここまでで途切れた……。

数時間後。目が覚めたら家族が脇にいて声援してくれていた。集中治療室に移動してベッドに横たわっているようだ。少しずつ意識が鮮明になっていく。家族と二言三言会話を交わしたと思うが、再び睡魔が襲ってきて夢の世界へ。

起床したときの感覚は?

翌朝、窮屈さの中で起床した。ベッドの上でさまざまな管にしばられ、身動きが取れない。これほどの拘束状態におかれるとは思わなかった。傷口の痛みはほとんど感じない。むしろ体を自由に動かせないことのほうがツライ。

昼過ぎ、看護師さんがやってきて恐怖の言葉を発した。

「さあ、ベッドの上に起き上がって縁に腰かけるリハビリをしましょう」

えーっ、手術翌日にリハビリかい。いやはや、なんとも厳しい世界だ。最近はそれが主流なのか。おそるおそる体を曲げ、何とか起き上がる。意外なことに、痛みは特にない。術後1日目からリハビリを行うことで、回復が早まるそうだ。嫌がらずにやっていこう。

午後、ストレッチャーに乗せられて一般病棟に戻る。今度は窓側の部屋を用意してくれた。ありがたい。ベッドに移ったとき、看護師さんが「おかえりなさい」と優しい笑顔で声を掛けてくれた。まさに天使である。このきらきらした特上の笑顔は生涯忘れることはないだろう。

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