パナソニック「AI関連売上高を10年で3倍」の覚悟 このままだと「化石になってしまう」と楠見社長
東洋経済オンライン / 2025年1月10日 8時0分
ウミはサービス開始時、スマートフォン向けアプリという形で提供される予定だ。AIを使い、ユーザー家族に生活改善のためのアドバイスをしてくれたり、必要なサービスを提供してくれたりする。
アプリに「家族のための食事を用意して」などと指示するだけで、事前に学習した家族の予定や食事の好みに加えて、摂取するべき栄養素など必要な情報を個別のアプリから取得したうえで、自動的に設定してくれるサービスになる見込みだ。
ほかにもアプリの側が「一緒に運動する機会をつくってはどうか」などとユーザーに提案し、ユーザーがそれを受け入れれば、家族のカレンダーに予定を設定するなど、健康維持のための機能も搭載されるという。
開発を担うのは、"Yoky(ヨーキー)”こと松岡陽子氏。グーグルやアップルの要職を経験した人物で、2019年にパナソニックに入社。翌年にパナソニック傘下で「Yohana(ヨハナ)」を創業し社長となった。ヨハナはウミの原型といえるファミリーコンシェルジュサービスを提供している。
CESの基調講演に登壇したヨーキー氏は、「65%もの親が孤独を感じている。とくに介護と子育て両方に挟まれた『サンドイッチ世代』の負担が大きく、支援が必要だ」と呼びかけた。
「生活向け」で他社と差別化
ウミのように人間からの曖昧な指示や、指示がなくても必要性を理解し、複数のアプリやサービスにまたがって、要求した内容を実行してくれる機能は「オーケストレーション(指揮)機能」と呼ばれている。
複数のアプリを横断して人間の指示を実行してくれるAIの開発は、グーグルやアップル、マイクロソフトなどアメリカの大手IT企業がしのぎを削る分野でもある。
アメリカの半導体大手エヌビディアも、新たに開発したAIエージェント機能をCESで発表した。AIエージェントは、人間による具体的な指示がなくても自律的にタスクを進める。
プログラムのソースコードを書いたり文章を要約したりといった役割だけではなく、「製造業を含め、あらゆる企業で活躍できるフィジカル(物理的)AIを作れる基盤」(エヌビディアのジェンスン・フアンCEO)だという。
パナソニックはアンソロピックとの提携で自社にない生成AI関連のノウハウを補うほか、生活(暮らし)の領域をメインターゲットにすることで並み居る競合との差別化を図ろうとしている。
今のところ、グーグルやアップルが開発を急ぐエージェント機能を搭載した生成AI搭載スマホの主眼は、予定調整や乗り換え検索など、どちらかと言えばビジネス用途がメイン。エヌビディアも企業向けが主体だ。
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