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予防歯科の先進国で「甘いケーキ」が日常の衝撃 日本の「歯磨きの仕方」ではむし歯は防げない

東洋経済オンライン / 2025年1月11日 9時30分

定期検診の大切さは、日本でも認識され始め、近年は受診する人が増えています。とはいえ、その割合はまだまだ少ないものです。2014年に全国の1181の歯科医院で実施された調査によると、定期検診を受けている人は37パーセントでした。半数以上は、定期検診を受けていない状況です。

また、定期検診を受けていても、「歯石取り=歯のメンテナンス」と勘違いしている人がなんと多いことか。あるいは、ちょっとしたむし歯を見つけ、「じゃあ、治しておきましょう」と治療する歯医者もいます。患者としては「来てよかった」となりますが、じつは削らずにすむ方法があるのに削ってしまい、将来のむし歯リスクを高めていることもあるのです。

結果として、むし歯が再発し、何度も治療するはめになる。最悪の場合、抜歯して入れ歯に至るケースも少なくありません。

「80歳になっても20本以上の歯があるスウェーデン人」

では、なぜスウェーデンは、むし歯の罹患率が低い国になったのでしょう。じつをいうとスウェーデンは、かつて日本以上にむし歯の罹患率が高い国でした。むし歯が悪化して抜歯する人も多く、高齢者の多くは入れ歯をしていました。

もともとスウェーデン人は、イエテボリ大学の教授たちに限らず、甘いものが大好きです。スウェーデンには「フィーカ」と呼ばれる、甘いものと一緒にコーヒーや紅茶を楽しむ習慣があります。

そんなスウェーデンでは、むし歯や歯周病の罹患率が高く、これが政府にとって悩みの種でした。罹患率が高いと、それだけ医療費がかかります。また、むし歯や歯周病の人は、ほかの病気にも、かかりやすいことがわかっていました。

たとえば歯周病の人はリウマチ、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、がんなど、さまざまな病気のリスクが高まります。最近も2024年1月には九州大学大学院歯学研究院の研究グループが「奥歯を失うとアルツハイマー型認知症の発症リスクが高まる」と発表して話題になりました。

そこでスウェーデン政府は、むし歯や歯周病予防に力を入れだすのです。予防歯科に力を入れることで、全体の医療費を下げようと考えたのです。

1970年頃から取り組みが始まり、そこから得られたデータをもとにした、予防歯科に関する研究も進みました。ここで調査・研究に大きな力を発揮したのがイエテボリ大学です。

1985年から2020年にかけて、12歳児のDMFT指数(むし歯を経験した歯の数)が3.1から0.7へと約77パーセント減少しました。歯科医療にかかる費用も、総医療費の伸びに比べ、はるかに低く抑えられています。

歯の健康について、「8020運動」をご存じの方も多いでしょう。いつまでも自分の歯でおいしく食べるために、80歳で20本以上の歯を残そうというものです。

日本で2021年に行われた歯科疾患実態調査では、80〜84歳における残存歯数の平均は、約14.3本でした。一方、スウェーデンで2022年に発表された80〜89歳の平均残存歯数は約20.7本で、スウェーデンのほうが6.4本多く、「8020運動」の目標をクリアしています。まさにスウェーデンは、日本が目指す歯科医療を実現している国になったのです。

前田 一義:歯科医師、日本歯周病学会認定医

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