「デジタル投資→PBR1倍超」期待する人の深刻盲点 「企業の解散価値>株式価値」をどう改善する?
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時50分
ローランド・ベルガー、KPMG FASなどでパートナーを務め、経営コンサルタントとして「40年の実績」を有し、「企業のDX支援」を多くてがけている大野隆司氏。
この連載では大野氏が自身の経験や大手・中小企業の現状を交えながらDXの効果が出ない理由、陥りやすい失敗、DXの将来性について語る。
今回は「デジタル投資がPBR改善につながるのかどうか」を検証する。
「珍しい株主提案」の中身
株主提案自体はいまや珍しいものではありませんが、昨年11月、デジタル業界ではちょっと珍しい株主提案がありました。
【ひと目でわかる】PBRを改善するために必要な「アプローチ」は?
ある海外ファンドが、システム会社の社宅用の不動産投資に関する株主提案を行ったのです。
ちなみにこのシステム会社は、2024年9月期は売上約1400億円(前年比約25%増)、営業利益45億円(同約10%増)と好調でした。
株主提案では、2024年9月期には有形固定資産が243億円(うち社宅は簿価164億円、従業員1人当たり約644万円)になる見込みであり、一方で、2022年9月期以降の株主への配当総額が約9億~11億円と社宅取得費用の3分の1にも満たない水準であることが、株主を軽視した過剰投資であると問題視したのです。
上場企業である以上、常に会社の成長へ資する納得感のある「投資活動」が求められるのは当然のことでしょう。
2023年3月に東証から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願い」が出されたこともあり、ここのところ経営の関心が高いものは「PBR(Price Book-value Ratio、株価純資産倍率。(株価の)時価総額÷純資産で算出)の1倍超え」でしょう。
PBRが1より小さいということは、企業の株価が純資産を下回っていること、つまり企業の解散価値が株式価値より高いと評価されている状態です(詳しくは『東証が異例の要請「PBR1倍割れ改善」の"真意"』などの記事を参照)。
今回はデジタル投資・DXは、本当に「PBRの改善」に効くのかを考えてみたいと思います。
デジタルで株価を上げた「ノンテックカンパニー」は?
「積極的なデジタル投資で株価を上げたノンテックカンパニーがあります」
このようなセールストークを2020年前後からよく耳にします。ここでよく登場したのがアメリカのドミノ・ピザ社です。
2010年からの10年間でドミノ・ピザ社の株価は約8倍強上昇していますが、これはアマゾン社とほぼ同じ上昇率です。
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