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トランプ発言で注目「カナダ」の日本との"深い縁" キャノーラ油の品種改良の背景に"両国の信頼"

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 16時0分

市場の動向を見て、出荷の時期がくると、それぞれの仕向地向けに、種類、品質別に厳重に管理された小麦は、引き込み線で待機している個々の貨車に順次積み込まれる。

100台を超える貨車が連結されて、小麦は、大平原を一路西に向かう。その勇姿は圧巻だ。途中、カナディアン・ロッキー山脈を越えて、太平洋岸のBC(ブリティッシュコロンビア)州プリンス・ルパート港へ到着する。

そして、小麦は日本へと向かう。

「日本は、信頼できる輸出先です。最高品質の小麦は日本向けです」と、施設の責任者が語ってくれた。実際、日本は、パスタの原料となるデュラム・セモリナ種の小麦の大部分を、イタリアではなく、カナダから輸入している。

世界第4位の小麦生産国カナダが、日本の食卓を支えている。

キャノーラ油――日本・カナダの信頼の原点

食育の重要性が指摘されて久しいが、適切な食生活こそ健康の土台であるからだ。

そこで、カナダが世界最大の生産量を誇るキャノーラ(菜種)油の登場である。酸化しにくく、加熱に強く、風味も良く、価格も常識的なキャノーラ油は、健康志向の日本人の食卓にとって必需品だ。

日本国内に流通しているキャノーラ油の原料となる菜種の80%は、カナダから輸入されている。そして、カナダにとって日本は、アメリカに次ぐ2番目の最重要な輸出先である。

実は、「キャノーラ」という名称は、カナディアン・オイル・ロー・アシッド(Canadian Oil Low Acid)の略称に由来する。ここには、旧来の菜種とはまったく異なる品種を生んだカナダの歴史と誇りがにじんでいる。

半世紀程さかのぼるが、1970年前後、カナダ農業は深刻な問題に直面していた。世界最大級の小麦生産国の順調過ぎる生産が市況を圧迫し、価格が長期的に低迷。政府は、小麦などの穀物生産を大幅削減する政策を推進する。

特に、中西部のマニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州において、小麦、大麦と並ぶ新たな作物として、菜種の導入を検討する。

ところが菜種は、悪玉コレステロールを上昇させないオレイン酸を多く含む一方、エルカ酸とグルコシノレートを含み、動物実験の結果、心疾患をもたらす危険性が指摘されていた。

そこで、カナダの穀物専門家・科学者は、菜種の本格的な品種改良に取り組む。めざしたのは、エルカ酸もグルコシノレートも削減する「ダブル・ロー」。

実は、カナダにおける菜種の品種改良には、日本も深く関わっている。

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