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真冬に本領発揮する、「津軽鉄道」の名物車両たち ストーブ列車にラッセル車…、厳寒期の風物詩

東洋経済オンライン / 2025年1月24日 6時30分

検修庫は木造板張りで、暖房はない。その日は0℃程度の「あたたかさ」だったが、マイナス7、マイナス8℃と下がっても検修係はマウンテンパーカーの作業着に軍手1枚で作業に臨む。行っていたのは、ロッド摺動部への注油であった。

DD352は昭和34年すなわち1959年製造と標記があり、御年65歳。僚機DD351(1958年製)は車籍を残すが部品取り用に休車。現役はDD352だけで、新部品の確保がむずかしいので“虎の子”のストーブ列車牽引用となっている。しかし根本的に高経年のため、近年はストーブ列車も気動車で牽引するスタイルに変更し、なるべく出番を減らして大事に使っているという。機関車が先頭に立つ本来の姿は週末を主とし、平日だった訪問日は稼働しなかった。一般観光客は気に留めなかろうが、鉄道ファンにとっては古参の凸型機関車に旧型客車を連結した姿こそ津軽鉄道のストーブ列車である。

この機関車の特徴でありメンテナンス上の最大のポイントは、蒸気機関車と同じ構造の動輪同士を結ぶロッドである。エンジンは重検査のつど新品同様に整備されるので、今のところ問題なしだそう。しかし、メタル支持のロッドは少しでも傷や変形があると、油膜で円滑を保つ摺動部が発熱し、台車をバラす調整と修理が求められる。無理を続ければ致命傷になる。

ベアリングに取り替えては?との提案も出るのだが、ベアリングを嵌めるために軸穴の口径を拡げ、それで万が一にも失敗したら、もはや二度と元には戻せない。機関車自体がなくなってしまう。そのリスクを考えると決断には至れないと言う。

それほど大事に考える理由として、排雪運転がある。通常ならば気動車2両の牽引でも機関車との差異はないが、ひとたび雪が積もると、低速時の粘りあるトルクが優位を発揮する。JRからDE10形を斡旋されたこともある。

だが、現在のDD352よりも重く、津軽鉄道の線路、とくに鉄橋の耐荷重や、牽引力や速度面の折り合いがつかない。要はハイスペックすぎて話が流れた。もっとも、さらに切実な話として譲渡額の面もあったようだ。

出番が減ったラッセル車に稀少な2軸貨車も

津軽五所川原駅構内には、ほかにも多彩な車両が留置されている。きびしい台所事情を語るものだが「放置」と言ってよいものもある。まずは今の季節に最も目に留まるのはラッセル車キ101。昭和ひと桁1933年の国鉄大宮工場製で、1968年に津軽鉄道に来た。冬の守護神と呼びたいところだが、現在の主力はロータリーヘッドを備えるモーターカーとのこと。キ101を予備扱いにするのは、一つには前述のとおり虎の子のDDを大事にしている点がある。押しが強い利点はあるものの、それだけ大きな負荷がかかるのだ。それともう一つ、近年ならではの事情が大きい。

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