真冬に本領発揮する、「津軽鉄道」の名物車両たち ストーブ列車にラッセル車…、厳寒期の風物詩
東洋経済オンライン / 2025年1月24日 6時30分
ラッセル車による除雪は、高速で雪を蹴散らして走ってこそ効果がある。だが、分岐ポイントや踏切板、線路脇の各種標識、構造物にぶつからぬよう(それらは雪に埋もれて見えない)ウイングやフランジャーを絶妙のタイミングで操作しつつの運転は、線路と運転を完全に熟知した者でないとできない。その熟練の経験者がいなくなったのだ。定年後も指導者として乗ってもらっていたが、それも困難になってしまった。
ちなみに舘山氏は本気の除雪運転を最後に経験した1人だそう。ラッセル車が跳ね飛ばして巻き上げる雪煙に、後ろの機関車からは信号などまったく見えず、前方注視の一切はラッセル車乗務員に任せて遮二無二押せ、とベテランに指導されながらの度胸一本の運転だったと語る。
キ101の後ろに元西武の旧型電車が転じたナハフ1200形客車。1965年に津軽鉄道に入り、高校生があふれて通勤利用もまだ多かった頃、ロングシートの収容力を活かして輸送力を確保した車両だ。乗務員室がないので、車掌は片隅にパイプ椅子を持ち込んで乗ったとか。2両の車籍が残るが、実態は錆びつき傷んで、外板の随所に穴が開いている。修復保存の話もあったが、今や、やるとなれば車体をまるごと新製するに等しい状態だ。
その横に並んでいるのは、現役のストーブ客車と一緒に津軽に入った国鉄オハ463。先代の17m級客車(1両は鉄道博物館で保存展示)の後継で3両が導入されたうち、2両に部品を供給するため休車となっている。車籍は残る。
ホーム反対側の留置線には、キハ22027と、2軸無蓋車トム1〜3の3両および2軸タンク車タム501。キハ22形は先代の主力気動車で、国鉄から秋田内陸縦貫鉄道を経て1989年に津軽に来ている。予備で1両が残されたが、現状は朽ちて廃車。一方、トムはバラストや資材運搬用の現役である。1927年津軽での新造と言うから建設時の車両だ。2両はスポーク車輪のまま残り、軸箱を開けると車軸に刻印されたMade in Germanyの文字が見られるそうだ。
タム501は元国鉄タム2800形。貨車ファンが見たら歓喜する稀少な1両だ。黒塗装も美しく、現役感を放つ。同車が津軽鉄道にある理由が、とても興味深い。
車庫がある五所川原駅裏手は現在でこそ住宅地だが、かつては田圃でタンクローリーが入れる道がなかった。燃料は、五能線が国鉄時代は国鉄のタンク車で運び込んでいたが、貨物扱い廃止によって手段を失うことになった。そのためタム1両を購入。津軽鉄道の途中駅まで道路輸送で運んできて、そこでタムに移し替えて運んだのだ。
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