「脱サラしたプロ棋士」1年半で見た"棋界のリアル" 小山怜央四段が直面した、厳しさと凄みの日々
東洋経済オンライン / 2025年1月25日 9時0分
小山怜央四段の日常は、午前9時頃に目覚めるところから始まる。一息つくと、コップに水を注ぎ、カロリーメイトを1つかじった。会社員時代には職場で仕事に取りかかっていた時間だが、今はのんびりとした朝だ。
【画像】対局中とは別人? 筆者が撮影した小山怜央四段の思いっきり「プライベートな姿」
将棋のプロ公式戦の対局は、月に1人当たり平均で3〜4局ほど。それ以外のスケジュールはすべて自由に使える。
「棋士になって一番変わったことは、時間が異常にできたことですね」
【写真を見る】対局中とは別人のような「小山怜央四段の素顔」(7枚)
「異色の棋士」としてデビューするまで
大学卒業後、システムエンジニアとして企業に勤めてきた。月曜日から金曜日まで、朝7時に起きて片道1時間半の電車通勤。職場と自宅の往復で1日が終わり、好きな将棋も電車の中、携帯アプリで指すのがやっとだった。
27歳で「棋士編入試験」を目指して会社を辞めた。アマチュアが受験資格を得るまでのハードルは高く、2014年に制度化されてから小山の前に資格を得た者は5人しかいなかった。そのうち受験したものは3名で合格者は2人。
棋士のほとんどは養成機関の「奨励会」から誕生する。ただ、10代の早いうちに入会試験に受かっても、棋士になれるのは2割未満の狭き門だ。
編入試験の受験資格を得るには、まずアマチュアの全国大会で優勝するなどトップレベルの成績を上げることで、プロ公式戦への特別出場枠を得る。そこでプロを相手に規定の勝利数、勝率を残して、初めて受験申請ができる。
大学時代に学生名人とアマ名人になった小山でも、この規定をクリアするまでに足掛け4年を要した。途中で会社を辞めて将棋の勉強に専念するも、そこから受験資格を得るまで2年。その間は貯金と失業保険、将棋講師のアルバイトで食い繋いだ。
そして3人目の編入試験合格者となったのは、2023年2月、29歳のときだった。
プロ棋士の「リアルな日常」
サラリーマンから棋士への夢を実現させた小山だが、将棋のプロの生活とはどのようなものか?
彼らはプロ公式戦で将棋を指し、対局料と賞金で生活している。現在、棋戦は公式戦と準公式戦だけで17個あり、新聞社や不動産会社、証券会社など多くの大企業がスポンサーにつく。その契約金が将棋連盟を通して、対局ごとに棋士に振り分けられるわけだ。
対局料は勝者にも敗者にも支払われ、その金額は棋戦や棋士のランキングによって異なる。タイトルホルダーになれば対局料だけでもかなり高額だ。
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