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星野代表が描く「次世代への事業承継」と海外進出 2028年ニューヨーク州に温泉旅館を開業予定

東洋経済オンライン / 2025年1月28日 8時50分

星野リゾートは私が4代目となるファミリービジネスだが、ファミリービジネスの最大のいいところは、上場企業と異なり収益の最大化を絶対的な目標としなくていいことだ。守るべき価値観に基づいて、企業資産をどのような目的で社会に対して使うのかというビジョンを、ファミリーが決めることができ、それが守られていくというのが大事なポイントだ。社員にとっては安心材料になるし、社会に対しては企業の安定した存在感として寄与する。

――経営がファミリー(創業家)を離れ、マネージメントチームに引き継がれても、そのような価値観を守ることはできるのか。

最近のビジネス研究では、経営陣が担当する部分とファミリーが担当する部分を明確にしていくのが正しいメソッドだと提唱されている。企業の価値観に沿った経営がなされ、ぶれずに目標に向かって進んでいるかを確認するのが、ファミリーの役割になる。

星野リゾートが変わらずに守っていくべきなのは「フラットな組織文化」だ。これこそが、企業としての我々の競争力の源泉になっているし、いい会社であることの大前提になっている。

無名の場所に進出を決めた理由

――以前から北米大陸へ進出すると話していたが、2028年にニューヨーク州シャロン・スプリングスに温泉旅館を開業予定とのこと。まったく名前の知られていない場所をなぜ選んだのか。

候補地は、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークなどの大都市から車で3~4時間圏内で、かつ温泉が湧いている場所という条件で探していた。シャロン・スプリングスはニューヨークからもボストンからも3時間半で行ける場所だ。

シャロン・スプリングスが温泉地として最も繁栄していたのは1870年代で、当時は60軒くらいのホテルがあったというが、今はわずかに1軒が残るのみだ。エアラインの発達によって、フロリダやコロラドなどのリゾート地へも簡単に行けるようになったために衰退した、大都市近郊の観光地の典型例だ。

最終的に進出先として選んだ理由は、日本と同じように四季があるというのが大きい。お客様に季節の移ろいを感じていただくことが、日本旅館におけるサービスの真髄だからだ。また、名前が知られていないことも、我々のビジネスにとってプラスに働くと考えている。

――有名観光地よりも、無名の場所に進出するほうがいいということか。

例えば近隣にある有名リゾート地のサラトガ・スプリングスには、ゴルフコース、競馬、アートフェスなど、見るべきさまざまなコンテンツがすでにある。一方、シャロン・スプリングスはほかに何もないので、我々が用意する温泉文化を存分に体験していただけるという読みがある。また、過疎化が進んだ町に日本企業が投資することは現地の人たちにとっては、非常にウェルカムなことであり、これも決め手となった。

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