ロシアーウクライナ戦争が起こった歴史的な必然 「東欧を制する者が世界を制する」100年前の格言
東洋経済オンライン / 2025年2月5日 15時30分
ウクライナ情勢が徐々に悪化し始めた冷戦終結後の時代と、その100年前の第一次世界大戦終結後の時代には、ある共通点があります。それは、楽観論が蔓延していた点です。
冷戦終結後は、40年以上世界を二分してきた冷戦構造がようやく融解し、アメリカ率いる西側陣営とソ連率いる東側陣営が和解した時代です。欧米人は、この事実をもって、「ようやく世界から大国間争いが永遠になくなるときが来た」と安堵しました。「これからの時代には、欧米流の自由民主主義が全世界に広がり、ロシアや中国も欧米と手と手を取り合って平和を謳歌する」と、多くの人々が大真面目に考えていたのです。
実は、このような楽観論は第一次世界大戦終結後にも広がりました。第一次世界大戦は、当時の時点で人類史上最大規模の破壊・被害者を出した戦争でした。これほどの戦争を経た結果、人々は平和の尊さをあらためて嚙み締め、「こんなに大きな戦争はもう二度と起こらないはずだ」と確信していました。実際、当時この戦争は「戦争を終わらせるための戦争(The War to End Wars)」と呼ばれていたほどです。
当時のウィルソン米大統領も、この戦争における民主主義陣営(イギリス、フランス、アメリカなど)の勝利をもって、「民主主義こそ人類の理想であり、それを世界中に届ける責務がある」と発表しました。冷戦終結後と奇妙なほど似ています。
この楽観論に一喝したのがマッキンダーでした。マッキンダーが1919年に著した『民主主義の理想と現実』は、次の序文から始まります。
「目下我々の頭の中は、未だに一切を巻き込んだ戦争の生々しい記憶でいっぱいである……こういうときには、疲れ切った人たちがもう戦争はごめんだと思う単純な理由から、得てして永久的な平和が訪れるかのように錯覚する誘惑に陥りやすい。けれども国際的な緊張は、最初はゆっくりでも、どのみちまた増加の一途を辿るだろう……もし我々が将来戦争のない世界を作ろうという国際連盟の理想を貫徹したいならば……地理的な事実をよく弁えた上で、これらの影響に対処する方策を考える必要があるだろう」
東欧に緩衝地帯を作ることを提案
要するに、「戦争直後に一時的に広がる平和への願いは次第に薄くなるので、そのような一時の感情で揺らがない、長期的で地理的現実を踏まえた平和体制を構築するべきだ」と訴えたのです。では、マッキンダーの考えた平和体制とは一体どんなものだったのでしょうか。一言でいえば、それは東欧に緩衝地帯(国と国の間に位置する、どちらの国の領土にも含まれない地帯)を作ることでした。
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