全員「元会社員」ケーキ職人の平均年齢は75歳 1978年創業の味を守り続ける中目黒「ヨハン」
東洋経済オンライン / 2025年2月8日 15時0分
利一郎さんが望むように「細々と」とは、いかなかった。保存料、着色料、香料、さらに水も使わず、オーストラリア産のフィラデルフィアチーズの豊かな風味を生かした手作りのチーズケーキは好評を得て、間もなく人手が足りなくなる。そこで頼ったのが、住友ベークライトの後輩たち。利一郎さんは次々と同社OBを招き入れ、ケーキ作りを教えた。当時からの流れをくむのが水谷さんだ。
「社内で、ヨハンはよく知られています。私も営業時代、お店に寄って手土産を買っていました。それまで家で料理もしたことがなかったんですけど、先輩たちが働いているところなので、安心感がありますね。覚えることが多くて大変ですが、化学メーカーだったので品質管理など通じるところもあります」
前職の最後の部署では「なんでも知っている長老」扱いだったのに、今は「なにも知らない若手」になって、その変化を楽しむ。
「客観的に自分を見ると、面白いですね」
まだ慣れないのは、仕事が15時頃に終わること。「飲みに行くのも、家に帰るのも早すぎる」ため、本屋や図書館、映画館に寄りながら、どう時間を有効活用するか模索中だ。
仕事に共通点を感じる「元品質管理部長」
ヨハンのチーズケーキは、チーズ本来の味わいを生かしたナチュラル、まろやかな甘みとコクが持ち味のメロー、ブルーベリー、サワークリームが爽やかなサワーソフトの4種類。いわゆるホールの形をした丸型と、細長い長方形の角形(メロー以外)がある。これらのチーズケーキは店頭に並ぶほか、成城石井、クイーンズ伊勢丹の品川店、東武百貨店の池袋店に卸しており、丸型は1日に30個、角形は20個、多い時にはどちらも50個ほど作っている。
ヨハンでなによりも厳格に守られているのは、創業時からのレシピ。そのために、すべての作業は正確な計量から始まる。新人が最初に教わるのは、「団子」作り。団子とは、チーズケーキの底に使われるクッキー生地を作るために、小麦粉、生卵、バターを混ぜた素材を指す。水谷さんとほぼ同じタイミングでヨハンに加わった北原一さん(66歳)、増田秀昭さん(64歳)の3人が団子作りの担当だ。
「店に来ると、50、60個の卵を割るところから仕事が始まります。人生でこんなの初めてっていうぐらい卵を割っていますね」と話すのは、北原さん。大学を出た後に入社したイトーヨーカドーで、65歳まで働いた。最後は品質管理部長を務めている。北原さんは、テレビでヨハンの存在を知った。
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