1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

全員「元会社員」ケーキ職人の平均年齢は75歳 1978年創業の味を守り続ける中目黒「ヨハン」

東洋経済オンライン / 2025年2月8日 15時0分

「たまたまうちの娘が7年前からここにケーキを買いに来ていて、お父さん、募集があるよって教えてくれたんです。友人がやっているコンビニで働こうかなと思っていたんですが、娘からここのケーキが無添加ですごくおいしいと聞いていましたし、娘に『モノづくり好きでしょ。ここで勤めてよ』と言われたので、面接を受けました」

ヨハンで働き始めて意外だったのは、ケーキ作りの奥深さ。厳密にレシピを守っても、日々の気温や湿度によって味や食感が変わってしまう。どのような天候、環境でも一定のクオリティを保つのは簡単ではないのだ。ヨハンに入社して8年、今も「仕事のなかで教えられることが多いです」と語る。

ケーキ作りを楽しむ「元鉄道マン」

真崎さんと一緒にケーキ作りの中核を担うのは、小野修一さん。1949年生まれ、福島出身の75歳、かつての国鉄に入社し、JR東日本では、宮城県の仙台から石巻を結ぶ仙石線のコントロールセンターで、指令長を務めた。

55歳で定年退職後は、ネイルアーティストをしている娘さんの仕事を会計担当としてサポート。その時、プライベートで知り合った人がたまたま和田利一郎さんの妻でヨハンの2代目、博子さんと知り合いで、「人を探しているから、東京で働かないか?」と声をかけられて、60歳で上京した。ケーキ作りの経験はなかったが、「まあ、なんとかなるんじゃないか」と楽観的に捉えていたそうだ。

子どもの頃、トランジスタラジオを作ったり、手先を動かすのが好きだった小野さんは、ヨハンの仕事が「すごく楽しかった」という。

「仕事をひとつ、ひとつ覚えていって、あれもできるようになったぞ、今度はこれをやってやろうとかって、自分の仕事がどんどんランクアップしていくことが面白かったね」

自分の腕前に自信を持つまでに5年。気持ちに余裕ができてからは、日々の仕事のなかでうまくいかなかった作業を工夫して改善することにやりがいを見いだしている。

「自分で考えたやり方でうまくいった時のうれしさってあるでしょう。仲良くしてる人に『こうやったらうまくいったよ』と教えてね。そうしたら、その人もいろいろ工夫してるんだ。そこがやっぱ手作りの良さで、オートメーションの機械でやるのとは違います」

いまだ腕を磨くことに余念がない小野さんの目標は、「先輩ぐらいのレベルになること」。その先輩のひとりが、高野袈裟松さんだ。

「できるだけ長く働きたい」と語る86歳

1939年生まれ、長野出身の86歳。実家は米農家だったが、次男だったため、上京して一度就職。20歳の時に転職した先が、住友ベークライトだった。同社では、日本各地の工場を転々としながら、今はめったに目にすることのない「黒電話」の製造一筋、40年。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください