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全員「元会社員」ケーキ職人の平均年齢は75歳 1978年創業の味を守り続ける中目黒「ヨハン」

東洋経済オンライン / 2025年2月8日 15時0分

「65歳の誕生日を迎える2カ月前、2023年の敬老の日に、たまたまヨハンが取り上げられたテレビ番組を観ました。退職した後、なにもしないで家でゴロゴロしている生活になって体を壊すのが怖かったので、もう少し調べてみようと検索したんです。それで東京新聞のウェブ記事を読んだら、『新しい「おじいちゃん」募集中』と書かれていました。ケーキを作ったことはなかったんですけど、もうデスクワークで働き続ける気はなかったから、それを見てすぐに電話しました」

趣味で子どもとよくキャンプに行き、「キャンプ飯」を作るのが好きだったから、キッチンに立つことに抵抗はない。実力勝負の職人に憧れ、そば職人を目指そうかと考えたこともあり、新聞にパティシエではなく、「ケーキ職人」と書かれていたことも気に入った。

高齢者が集うヨハンでは徒弟制度のような上下関係が厳しい職場を想像していたから、まるで違う雰囲気に驚いたという。

「最初は下働きだろうと思っていたんです。でも、入ってすぐに団子の配合とか大事な仕事をどんどん任せてもらえて、うれしいですね。それに、先輩たちは計算機を使わなきゃできないような計量の計算も暗算するんですよ。そういう姿を見て、年をとっても先輩たちのようにありたいなと思うようになりました」

ヨハンの仕事は、ヨーカドーで長年携わった品質管理に通じるものがあると感じている。

「伝統的な味を守ることに、先輩はみんなすごく厳しいんですよ。1つのケーキに配合する卵の量、小麦粉の量、すべてグラム単位でチェックしていますし、卵の殻が入ったら、どんなに小さくてもスプーンですべてすくってきれいな状態にします。ちょっとした油断でお客さんの信頼を失ってしまうんだという考え方が徹底されていますね」

「どうせなら年上から教わりたい」

北原さんと同じく、東京新聞の記事を読んで一歩を踏み出したのが、同期の増田さん。増田さんは大学卒業後、広告業界に入り、30歳で広告代理店大手のアサツー ディ・ケイ(ADK)に転職。同社で60歳までクリエイティブディレクターを務めた。その後、独立して現在も広告の仕事を請けながら、ヨハンでも働く。増田さんは40代の頃から職人の世界に思いを馳せてきたという。

「広告って若い人たちがどんどん出てきて活躍するから、40代後半になるとポジションが難しくなるし、少し仕事に飽きてきた時期だったんですよね。その頃、早期退職制度ができたので、これはいいチャンスかもしれないと思ったんです。僕はパンが好きで自宅でもパンを焼いていたから、パン職人になろうと思って。でも、結局、家のローンを考えたりしたら辞めることもできないまま定年を迎えました」

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