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全員「元会社員」ケーキ職人の平均年齢は75歳 1978年創業の味を守り続ける中目黒「ヨハン」

東洋経済オンライン / 2025年2月8日 15時0分

定年退職する際、ヨハンで働いていた先輩から「お前もこいよ」と誘われた。その先輩は友人でもあったから、ケーキ作りの経験はなかったものの、「気楽な感じ」で入社した。ところがケーキ作りは想像以上に難しく、先輩たちから仕事を任せてもらえるまでに3、4年かかったそうだ。

「電話機を作ってる時も、ケーキ作ってる時も、先輩を頼りにして、怒られて、その繰り返しだよね。先輩に『ちょっと作ってみてもいいよ』と言われた時は、ホッとしました」

ヨハンで働き始めて、26年。「自分でやるのが精一杯で、教えるのは得意じゃない」と高野さんは言うが、後輩たちは黙々と仕事をする高野さんの背中を見て学んでいる。冒頭に登場した新人のひとり、水谷さんはその仕事ぶりに感嘆する。

「高野さんは、リズムがあるんですよね。先週、一緒に並んで仕事をしたら作業が速くて、さすがベテランだと思いました」

ヨハンで勤め始めた時は、こんなに長く働くとは想像もしていなかったそうだ。これまで、体調不良や体の衰えを感じて引退した先輩たちを何人も見送ってきた。

「先輩といっても、もう仲間とか友達みたいな関係になっているから、切ないよね」

自身の26年間を振り返り、「(ヨハンに入社して)よかったと思います。働いてなかったら、どうなってたか」という高野さんは、「できるだけ長く働きたいね。あんまり足を引っ張っちゃうようだとまずいから、それだけは気をつけようかな」と穏やかにほほ笑んだ。

体力づくりで12キロ歩く86歳

高野さんと同じくヨハン最年長、今年86歳になるのが小林隆吉さん。長野出身で、高校卒業後、1年ほど実家の農業を手伝った後に上京し、義兄が働いていた住友ベークライトに入社した。60歳の定年まで資材調達や品質保証、総務などいくつかの部署に勤めた。

「定年退職した時、ヨハンで働いていた先輩から声をかけられました。会社でモノづくりをしたこともないし、家ではほとんど料理をしたこともない、チーズケーキを作ったこともなかったけど、当時、ヨハンで働いていた7人の職人全員が住友ベークライト出身で、3人が顔見知りでね。不安はなかったです」

ヨハンで働く職人は、子どもの頃から手先が器用だったという人が多いが、小林さんもそのひとり。入社から3年経った頃には、一人前になった。

大量の生地を練るのは力仕事で、250度を超える窯で次々とケーキを焼き上げるキッチンは、冬でも半袖で十分なほどに暑い。品質管理も厳格で、少しでも型が崩れたものは売り物にならず、気が抜けない。

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