「排気量それしかないの!?」大きいのに小さなエンジン搭載車、なぜ増えた? 税金安くてエコ、とも限らない?
乗りものニュース / 2024年4月14日 16時12分
大きいクルマはエンジンの排気量も大きくなるのが一般的。しかし、大きさの割にかなり小さな排気量のクルマも少なくありません。エンジンやターボの進化で可能になったことですが、小さくした方が燃費もよい……とも限らないようです。
「車格に応じた排気量」なんて崩壊してる?
近頃のクルマは、大きいサイズでも排気量を聞くと、意外に小さくて驚くことがあります。
たとえば最新型の「クラウン(セダン)」は、全長が5mを超えますが、ハイブリッドということもあって、エンジン排気量は2.5リッターしかありません。日産の新型「エクストレイル」はe-POWERですが、発電用エンジンは1.5リッターが搭載されています。
輸入車はさらに排気量が小さいモデルが目立ちます。
プジョーでも大きめのセダン風クロスオーバー「408」には、1.2リッターのエンジンが搭載されています。フォルクスワーゲンの「ゴルフ」も1リッター・エンジン搭載モデルがありますし、ルノーのミニバンである「カングー」は1.3リッター。プジョー「リフター」、シトロエン「ベルランゴ」、フィアット「ドブロ」のミニバン3兄弟はディーゼルの1.5リッターエンジンです。また、ジープの「ラングラー」という大きな4WDモデルも、最新型には2リッターのエンジンが搭載されています。
車体の大きさの割に小さなエンジンが搭載されているのは、ターボ技術やハイブリッド技術の進化が、その理由となります。
かつて、ターボ技術が未熟で、ハイブリッドのない時代は、エンジンは自然吸気(NA)が基本となっていました。日本でターボが解禁になったのは1979年のこと。それ以前はターボの量産国産車は存在していなかったのです。一方で、クルマは車体の大きさ・重さに見合ったパワーが必要です。そのパワーの目安となったのがエンジンの排気量でした。
1リッター・エンジンならコンパクトカー程度、2リッターなら中型セダン、大型車は3リッター以上といった具合です。そして、自動車に対する税制は、そうしたエンジン排気量によって定められました。それが現在、毎年に課される自動車税(種別割)です。
排気量をあえて上げよう
ところが、ターボ技術とハイブリッド技術が進化することで、同じパワーをより小さな排気量で実現することができるようになります。日本では1997年に最初のハイブリッドとなるトヨタ「プリウス」がデビューします。
エンジン車では、2000年代にフォルクスワーゲンが中心になってターボを利用することでパワーを追求するのではなく、元の排気量を小さくする「ダウンサイジング・ターボ」というアイデアが広がってゆきます。排気量を小さくすることで、低負荷時の効率を高めて燃費をアップさせようというわけです。
ところが、技術が進むほどに、さらなるアイデアが生まれました。それが「ライトサイジング」と「アップサイジング」です。
「ライトサイジング」とは適正な排気量にして燃費を向上させようというもの、「アップサイジング」は排気量を大きくして低回転しか使わないことで燃費をよくするという提案です。「アップサイジング」に熱心だったマツダでは、2014年にデビューした「デミオ(現・マツダ2)」を1.3リッターから2018年に1.5リッターに拡大。実用燃費を高めています。
同じように排気量を増やして燃費を高めるという方策は、ハイブリッドでも実施されています。たとえば、燃費を追求していた「プリウス」の2009年の3代目モデルは、エンジン排気量を先代の1.5リッターから1.8リッターに拡大しています。これにより、燃費性能は2代目モデルの35.5km/L(10・15モード)から、38.0km/L(10・15モード)に高めています。
最初は燃費を高めるために、排気量を小さくしたのですが、その後にまた大きくするというトレンドがやってきていたのです。
そう考えると、結局のところ、排気量は技術の進化に合わせて、小さくなったり大きくなったりすることになります。求めているのは優れた燃費性能であり走行性能です。その目標が先に存在あって、エンジン排気量は、その次になるというわけです。そして、燃費と走りは、年と共に確実に進化しているのは間違いありません。
ですから、いつまでもターボやハイブリッドのなかった時代の感覚で、エンジン排気量を見ていると、当然のようにズレを感じてしまうということでしょう。
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