1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

街中の湖に米軍爆撃機の名前なぜ!? 傍らには同名のカフェも 現地へ行ったら衝撃の光景が

乗りものニュース / 2025年1月11日 18時12分

ベトナム戦争に参加したB-52爆撃機のD型。同機は退役後に米国の基地にモニュメントとして保管されており、側面には実戦参加を記録した爆弾マークのシルエットが描かれている(画像:アメリカ空軍)。

ベトナムの首都ハノイには「B-52湖」なる場所があります。まるで団地の棟番号のようですが、由来はなんと米空軍の戦略爆撃機だとか。なぜそのような名称なのか、現地へ行ったら驚きの光景が広がっていました。

50年前の痛ましい記憶を残すため

 ベトナムの首都ハノイには、アメリカ空軍の大型爆撃機の名前を冠した湖があります。

 その名はズバリ「B-52湖」。同機は「ストラトフォートレス(成層圏の要塞)」というあだ名までつけられたジェットエンジン8発搭載の戦略爆撃機です。なぜそのような軍用機の名前が湖に付けられているのかというと、そこには本物のB-52の残骸が沈んでいるからで、現地を訪れれば実際に見ることができます。

 今回、筆者(布留川 司/ルポライター・カメラマン)はベトナムを訪問した折に、同地を訪れてみました。

 現地の解説板によると、この残骸はベトナム戦争中の1972(昭和47)年12月27日にハノイ上空で地対空ミサイルによって撃墜されたB-52とのこと。その一部がこの湖に落下して、半世紀以上経った現在も保存されているそうです。

「B-52湖」はハノイ市内の中心から西側に広がる住宅地にあり、現地へ行くには建物の合間を縫うように走る路地を歩いていく必要があります。

 なお、その湖は正式にはフーティエップ湖といい、周辺には小学校と商店も兼ねた建物が囲むように並んでいました。湖は1辺40mからなる正方形で、一見して人工的に作られたことがわかります。大きさ的には湖というよりも池という感じの小さなものでした。

 地元民しか来ない住宅地の奥まった場所にあるためか、筆者が訪れた時にこの場所にいたのは地元の人々だけで、湖の周囲では釣りを楽しむ人や、遊ぶ子供たちの姿が見られました。湖の脇にはB-52の名前を冠したカフェが営業していましたが、名前以外は戦争を連想させるものはない普通の喫茶店でした。

 湖の中の残骸を除けば、この場所に広がるのはベトナムの一般的な生活風景です。そのような場所で、今も戦争の爪痕を残している理由は何なのでしょうか。

大国の脅しに屈しなかった“誇り”か?

 アメリカ軍は、このB-52が撃墜された当時「ラインバッカーII」作戦という大規模な爆撃作戦を実施していました。これは、第二次世界大戦以降に実施された爆撃作戦で最大規模のもので、11日間の作戦期間中に2万t以上の爆弾がハノイとハイフォンの攻撃目標に投下されています。この作戦で戦力の中核を担ったのがB-52で、約1万5000tの爆弾が同機から投下されたそうです。

 爆撃は軍事拠点や工業地帯を中心に行われましたが、一方で約1600人(ベトナムの公式発表)の民間人が死亡しています。また、ベトナム軍(当時は北ベトナム軍)も迎撃戦闘を行い、15機のB-52を撃墜しています。

 これら被害と戦果を鑑みると、現ベトナム政府にとっては戦争の歴史を後世に伝えるうえで、B-52をシンボル的な存在として捉えていると言えるのかもしれません。だからこそ、フーティエップ湖に墜ちたB-52をあえて撤去せずにそのまま保存していると考えられます。

 なお、このフーティエップ湖の近くにはB-52戦勝博物館という常設展示施設があり、こちらにはより多くの残骸がB-52の原型に近い形で組み合わされて展示されています。博物館の解説には、当時の北ベトナム側の主張が強調された部分も見受けられたものの、日本国内で目にする欧米主体の考えとは異なる部分もあって興味深いものでした。

 現在は観光地として有名なハノイですが、このような軍事関連の展示施設は複数あります。ハノイ市中心部には、フランス植民地時代やベトナム戦争で使われたホアロー捕虜収容所が公開されており、郊外にはベトナム軍事歴史博物館という大規模な博物館が新しく作られています。

 これら施設はプロパガンダ的な展示も多いものの、ベトナム側の歴史認識を知るうえで参考になる部分も多いため、観光のついでに寄ってみるのもいいかもしれません。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください