【合同インタビュー】名匠イ・チャンドンが認める新鋭ユン・ガウン監督、少女たちの成長物語を描く「わたしたち」の撮影秘話を語る
Wow!Korea / 2017年9月19日 19時22分
それから、演技で驚かされた例としては、ソンが教室の黒板に「ソンのパパはアルコール依存症」と書かれているのを見つけ、それを消すシーンですね。途中で切って撮ると、感情を上手く作れないと思って、ロングテイクで撮ったんですが、スインは役にのめり込んでいたので、黒板を消した後も、呼吸が激しくて、止まらなかったんです。目も揺れているし。「カット」と言っても、その状態が続いていたので、衝撃的でした。エネルギーを使い果たしてしまい、めまいのような症状が出たようです。そんな感じで毎日が驚きの連続でした。
―劇中、爪をホウセンカで染めるシーンと、マニキュアで塗るシーンの対比が印象的でした。意図して盛り込んだのでしょうか?
私はシナリオを書くとき、何かに意味を持たせたり、象徴的なものを取り入れたり、何かをメタファーに使う、ということが苦手な監督なんですよ(笑)。ホウセンカで爪を染めるというのは、私が子供の頃によくしていた遊びでした。いまの子供たちからすると、ダサく見えるかもしれませんが、ソンはあまり裕福な家庭の子ではないけれど、手先は器用なので、自分が得意なことを見せつつ、友達のジアを慰めてあげたい、という側面も出ると思ったので、ソンに似合う遊びとして取り入れました。
そして、ボラたちと遊ぶときも何か一つ入れたいと思って、一度爪を使ったので、今度はマニキュアにしてみれば、ホウセンカと対比できるな、とその程度の考えで取り入れました。そしたら、映画が完成した後、見た方から、ホウセンカの場合、なかなか取れないことから“真の友情”の象徴で、マニキュアはすぐに落とせるから、“一時的な友情”なんじゃないかという意見が出て、私が意図していた以上に、いい解釈をしてくださったようです。
―イ・チャンドン監督との作業はいかがでしたか?
シナリオ完成までをご一緒させていただいたんですが、私が初期に書いていたものは、学校の暴力やいじめを扱ってはいたんですが、ジャンル的な要素も入っていたり、映画的な仕掛けがあったり、大人の物語と思えるようなものでした。それを(イ・チャンドン)先生は見抜いたようで、「偽物ではないか?」と指摘されました。それで、半年以上、2週に1回ぐらい、シナリオのことで先生とお会いしたんですが、新しいものを書いて持っていっても、批判されて突き返される、という繰り返しだったので、もうダメだと思って、本物とは何かを私なりに考えた末、自分の話を書くことにしました。そしたら、先生からも、同期の監督からも「本物っぽいね」と言ってもらえたんです。撮影している間も、先生がずっとそのことを耳でささやいているような感じがしました(笑)。私にとっては大きな問い掛けでしたね。
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