「日本の10年国債金利って何%なの?」ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト・矢嶋康次の指摘
財界オンライン / 2023年4月4日 15時0分
4月より植田日銀新体制が動き出す。おそらく、国債市場を大きく歪めているYCC(イールドカーブコントロール)の運用を見直すことで、市場機能の回復に動き出すだろう。
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現在、日銀が導入しているYCCは、短期金利のマイナス金利政策に加えて、長期国債の買い入れにより10年国債利回りをゼロ%程度に誘導することで、短期から長期までの金利全体の動きをコントロールする政策だ。
黒田総裁のもとで始まった異次元緩和は2013年4月の就任以来10年に及ぶ。マイナス金利とYCCも16年の導入以来、すでに6年以上が経過する。YCCの運用見直しは、金利上昇につながるが、その水準はどこにあるのか。
日本と同じように20年3月に3年物金利を固定化したオーストラリアは、翌年21年11月にその目標を放棄し、著しい金利上昇に見舞われた。
日本はそのオーストラリアより金利の固定期間が長く、操作目標も長い。普通に考えれば、金利の上昇幅はすごいことになると考えてしまう。
仮にいま長期金利が上昇したら、国の財政は利払い費が増えて硬直化し、企業投資は資金調達コストの上昇で減少する。個人も住宅ローンの返済増で消費を抑制し、経済には大きな影響が及ぶ。
ただ、いまのところ市場に、大きな危機感は見られない。
YCCの解除による長期金利の水準論には、いろいろなアプローチがある。
例えば、①潜在成長率に物価を加えて、何らかのプレミアムを乗せるアプローチ、②海外の金利との関係から導出するアプローチ、③金融工学的なモデルを用いるアプローチなどである。いずれも、YCCの解除で想定される水準は1%程度。いま解除しても、0.5%程度しか上昇しないということになる。
日銀が長期金利の許容変動幅を、現在の0.5%から引き上げても、それほど急激な金利上昇は想定しなくて良いことになる。異例なことを止めても、金利がそれほど上がらないという、不思議な世界が予想される。
金利上昇が小幅に留まることは、果たして良いことなのか。90年代、日本の潜在成長率は平均して約2%。いまはゼロ%の前半で推移する。そもそも、日銀が長期金利を低く抑え込んだこと自体が、大きな誤りだった可能性すらある。異次元緩和の効果もまったく無かったのかもしれない。
黒田緩和は、デフレでどうにもならなくなった日本の壮大な社会実験だった。大幅な円安で先々の見方を変え、雇用環境を良くして経済浮揚に一役買ったものの、本来真っ先に取り組むべき成長戦略や構造改革の力を弛緩させ、時間を浪費させたという見方もできる。
副作用が目立ち始めた政策は修正されるべきだが、それだけで全て解決という訳でないことは、肝に銘じるべきだろう。
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