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JR東日本が育てた「TTG」のAI無人決済店舗システムが人手不足下で人気殺到

財界オンライン / 2024年3月4日 11時30分

TTGが手掛ける最新のAI無人決済店舗が品川駅で実証実験を実施した

日を追うごとに深刻になる人手不足。また、少子高齢化による乗客減で鉄道の駅などでは空きスペースが生まれ始めている。そんな課題をAI無人決済システムで解決しようと動いているのが「TOUCH TO GO(タッチ・トゥー・ゴー、TTG)」という会社だ。実はこの会社の母体はJR東日本。国鉄分割民営化から35年余が経つ中、他の鉄道会社からも引き合いがくる新ビジネスが動き出している。

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50台前後のカメラとセンサーで無人決済店舗を実用化

 JR東日本が街びらきを目指して再開発を進めているJR山手線の高輪ゲートウェイ駅。ホームから改札階に上がると改札付近に透明なガラスで囲われたコンビニエンスストアが目に入る。ただ、会計するためのレジは見当たらず、店員の姿もない。まさに〝無人店舗〟だ。

 店内に入った利用者は棚から商品を手に取って出口付近の無人決済エリアに立つと、商品のバーコードをスキャンすることなく会計が終わり、店から出てくる。クレジットカードや電子マネー、現金などで決済した。この途中、店員は一切介在していない。

「無人は今後の小売店舗の〝武器〟になる」─。このように語るのはTTG社長の阿久津智紀氏だ。このAI無人決済システムを開発したのが同社だ。無人決済店舗は実験店舗ではない。既に実用化されている。

 高輪ゲートウェイ駅の1号店に続き、東京駅日本橋口にあるサピアタワーの「ファミマ! !」や羽田空港の「ANA FESTA」、JR目白駅の改札外などにもオープンさせており、今では全国140カ所に拡大する。

 同社の無人決済システムは店内に設置された50台前後のカメラやセンサーなどが入店した利用者の手に取った商品をリアルタイムに認識。出口付近の決済端末のディスプレイで表示された購入商品の明細と合計金額を確認し、決済するだけで済む。

 メリットは利用者だけではない。非対面で買い物ができるため、従業員のレジ打ち作業が不要になり、商品の補充のみで済むなどオペレーションの省人化が実現できる。実際、前述のファミマ! !では「3人必要だったオペレーションは1人のみ。しかも、商品の補充だけ。その1人も近くの店舗から一時的にヘルプに来るだけだ」(同)。

 最初は使い方に不安を覚える利用者も使い方に慣れると習慣化する。実際に「コロナ禍でも使い慣れたサラリーマンの利用が増えた」(同)という。今でも同店の月販は伸びを続けている。



空きスペースの有効活用で地方創生にも寄与

 そんなTTGとはどんな会社なのか。実は同社はJR東日本からの初のカーブアウト企業(新規事業などを親会社から切り分け、親会社から出資を受けつつ別企業として独立)。JR東日本のコーポレートベンチャーキャピタルであるJR東日本スタートアップと無人決済システムを開発したベンチャー企業・サインポストが50%ずつ出資して設立された。今ではファミリーマートや東芝テックなどからも出資を受けている。

 阿久津氏は「人手不足は鉄道業界でも共通の経営課題」と語る。そもそも阿久津氏自身、2004年にJR東日本入社後、駅ナカコンビニ「NEWDAYS」に配属されて店長を任されたが、そのときに人集めに苦慮した経験がある。17年にJR東日本スタートアップに出向し、サインポストと出会った。

 TTGはJR東日本を出自としているが、システムはJR九州や東急、西武鉄道、近畿日本鉄道、西日本鉄道など他の鉄道会社にも採用されている。「鉄道会社は縄張り意識が強く、会社の垣根を超えるケースは少なかった。しかし、人手不足対応では話は別だ。何もしなければ駅構内が空きスペースばかりになってしまう」と鉄道会社関係者。TTGの仕組みは鉄道会社の駅以外にも工場や学校、オフィスなどにも導入されている。

 さらにTTGは次なる手を打ち始めた。それが〝商品を手に取れる自動販売機〟。この新しいシステムは幅90㌢、奥行60㌢の棚から商品を手に取ってレジに進むと、自動で商品を検知して支払いができるというもの。

 カメラで人の動きや手に取った商品を検知し、レジで商品をスキャンすることなく支払いができるという基本的なシステムはこれまでと同じだ。新システムの特徴はそのサイズ。棚1つを置くだけで売り場ができるのだ。「自販機に類するような小型で使える無人決済店舗。駅や空港、ショッピングセンターの空きスペースで商品を販売することをイメージしている」と阿久津氏は意気込みを語る。

 JR品川駅の改札内にあるスペースでのテストでは、カルビーや靴下メーカーのタビオ、「東京ばな奈」を販売するグレープストーンの3社が協業。各社のユニットが隣接する形で設置されたが、ユニットの前に柵があるだけで大掛かりな工事は不要。また、商品を手に取ると、自動的に「ありがとうございます」という自動音声が流れるため、万引き防止にもつながる。

 これが軌道に乗れば、地方創生にもつなげていけると阿久津氏は話す。「地方の小さな工房や商店が都心で店舗を開こうと思っても販売員を派遣できない。しかし、この仕組みであればそれが可能になる」。更にカメラから取得した利用者の動線分析や棚のセンサーで商品の取得と戻しのデータが分かるビッグデータをマーケティングに生かすデータとしても活用できる。

「自販機以上、コンビニ未満。これがTTGのコンセプト」と阿久津氏は強調する。母体のJR東日本は中長期で鉄道と非鉄道の比率を現在の7対3から5対5にする目標を描くが、無人決済店舗が広がれば小売りの領域の拡大に弾みがつく。

 課題は社会受容性だ。子供やシニアといった層にもどれだけ違和感なく受け入れてもらえるかが勝負になる。人手不足に打ち勝つ仕組みとして根付かせることができれば我々の買い物体験も大きく変わることになる。

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