特集2017年11月27日更新

最近注目の「ジビエ料理」って何?美味しいの?

実は2017年の今年は明治時代の文明開化により肉食が定着してからちょうど150年目となる節目の年。近年、新たな肉食文化「ジビエ料理」が全国に広がりを見せ始めています。あらためて「ジビエ料理」とは何なのか、なぜ注目を集めているのか。また、巷で出回っているジビエ料理やその味の感想などをまとめました。

目次

ブームの予感!ジビエ料理

そもそも「ジビエ」って何?

ジビエとは、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味するフランス語だ。日本ジビエ振興協会のホームページでは、捕獲数の多い鹿やイノシシをはじめ、野うさぎや真鴨など、狩猟対象となる野生鳥獣はすべてジビエに定義されている。

ジビエにはどんな種類が?

シカ・イノシシ・野ウサギをはじめ、山鳩・真鴨・小鴨・尾長鴨・カルガモ・キジ・コジュケイ。最近、話題のカラス、またフランスでは狩猟禁止で貴重なタシギ等の鳥類や、ヌートリア・ハクビシンといった珍しい動物も「ジビエ」に含まれるようです。

なぜ最近注目されているの?

年々増える、野生鳥獣による被害

ジビエを食と推進する背景には、近年の野生鳥獣による農作物の被害、それによる農業者の農作モチベーションの低下、また野生鳥獣が道路に侵入してくることにより起こる交通事故が大きく関係しています。このような被害を狩猟によって野生鳥獣を減らし、またそれだけでなく食としても活用しようという動きが進んでいます。

増え続ける鹿やイノシシは森林や田畑を荒らし、樹皮や植物を食べ尽くす。その被害総額は年間約200億円といわれるほど、深刻化しています。
被害の多くは、鹿、猿、イノシシによるものです。その現状は想像以上にひどく、農業者の方々の間では『一生懸命やっても荒らされるなら、つくる意味がない』と農作放棄が起こっているほど。

鹿と列車の衝突事故は年間で約5000件

日鐵住金建材によると、なんと年間約5000件もの衝突事故が起きているというから驚きだ。今日も日本のどこかで10件以上も衝突事故が起こっているのかと思うと、尋常ではない多さだ。鹿の数はこの20年で20倍に増えているという。

繁殖力の強い鹿は年々生息数が増加

環境省によれば、13年時点で北海道を除く本州以南に305万頭(中央値)の鹿が生息しているという。その繁殖力は非常に高く、現状のまま増え続けると23年には453万頭に達すると考えられている。これを半減させるためには、計算上は現状の倍以上のペースで捕獲を進めなければならない。

年々減り続ける猟師不足問題

鹿の生息数が増えるいっぽうで、狩猟免許を所有している人の数は年々減っています。さらに免許所有者の高齢化も進んでいるため、活発な狩猟活動、捕獲がますます難しくなっている現状もあります。

丸山氏によると「現在のハンターの数は18万人程度で、もっとも多かった時期に比べて4分の1にまで減少している」という。
狩猟免許所持者数の推移を見ると、1975年には全国に50万人以上いたハンターが2013年には20万人を切り、その多くが60歳以上だ。20~40代のハンターはほとんど育っていない。いくら政府が「ジビエの消費量を倍増させる」と息巻いても、捕獲する人がいなければ実現は厳しい。

結果、「害獣を駆除しつつ、おいしくいただこう」

そして2016年には「鳥獣被害防止特措法」が改正され、「捕獲された野生鳥獣は食肉として利活用されるべきもの」として明文化されたことにより、食資源としてジビエの注目度が増しています。
地域の環境保全のためにも、ジビエの利活用促進は急務であり、ジビエの衛生管理やその取扱いについて正しい知識を持つ料理人が増えることで、鳥獣被害の軽減や地域への貢献が期待されています。

今年はジビエブーム元年に!?

猟師不足の解消なるか?狩猟ブーム

前述のとおり、狩猟免許所持者数が年々減少、高齢化が進むいっぽうで、近年では“ロハス”な感覚で狩猟免許を取得する若者が増えているようです。

最近、狩猟免許試験に若者が多く来ているというのは本当です。なんでも彼らにとって狩猟はロハスなのだそうで、良い意味で狩猟も変わってきたなと思います。また、一人でも多くの方が狩猟をすれば野生鳥獣による農家の被害が減少するため、若者が狩猟に関心を持つことは良い傾向だと思います。
「狩猟の楽しみ方は人それぞれですが......。私の場合は、銃を持って山に入るということ自体に興奮しますね。やぶをかき分けて山に入れば、鳥や虫の声が聞こえてきて、足元を見ればクルミなどの木の実や果物がたくさん落ちていたりして、次第に山と自分が一体になる感覚がしてきます。そして、いつ獣に出会うかもしれず、命の危険にさらされて獲物を狙う恐怖とスリル感。だから獲物を射止めた瞬間は、山に来てよかったと天にも昇る心地です。また、持ち帰って食べる肉が新鮮でうまいことといったら! 自らの手で獲物を殺し、さばき、食う。このことは、一見、残酷なようにみえて、最も生き物に対して感謝の気持ちが生まれる行為なのですよ。これだから狩猟はやめられません!」(若者ハンター)

離農による和牛の生産頭数減少の影響も

翻って現代でも、この数年で肥育用となる和牛の子牛価格は約2倍に跳ね上がった。2010年の口蹄疫や2011年の東日本大震災による離農の影響もあり、和牛の生産頭数は減り続け、価格も右肩上がりが続いている。そんな中、羊肉やジビエの専門店が続々オープンしているのは偶然ではないのだ。

農林水産省や県庁のTwitterでも「ジビエ」を普及するイベントを広く告知しています。

農林水産省

和歌山県

愛知県

食としてのジビエ

良質なタンパク質と脂質、鉄分やビタミンを多く含み、健康食としてもジビエは評価されています。

栄養豊富なジビエ料理

良質な脂肪と鉄分を含む「シカ肉」

脂質含量が非常に少ないため、1食あたりの脂肪摂取量を低く抑えることができ、繰り返し食べても脂質の過剰摂取になりにくいからです。さらに、シカ肉の脂質は牛肉などとは異なり、必須脂肪酸のリノール酸をはじめとする多価不飽和脂肪酸含量が多く、鉄分も多く含むとても良質な脂肪です。
鉄分は、ブタやニワトリの肝臓にも豊富に含まれていますが、それらは鉄分と共に脂肪分も大量に含んでいます。シカは鶏ササミと同じくらい淡泊な赤身部分に鉄分を多く含む点が非常に特徴的です。
また、シカ肉にはカルノシンが多く含まれています。カルノシンは、2個のアミノ酸が結合しているためジペプチドと呼ばれる分子です。カルノシンには、酸化ストレスを抑える抗酸化作用や体液のイオンバランスを一定に保つ緩衝作用があるといわれています。
それによって、タンパク質分解による細胞の老化や病気を抑える効果があるとされています。さらには、運動中に筋肉で生成する乳酸を緩衝作用によって中和することで、筋肉が酸性化することを防ぎ、運動能力の向上につながる可能性も指摘されています。
メリットとしては、シカ、イノシシともに、他の食肉に比べ、鉄分、ビタミンB2とB12、亜鉛を豊富に含んでいることだ。特に認知症予防につながるとされるビタミンB12は豚モモに比べ、シカでは4.3倍、イノシシには5.7倍も含まれている。

美味しいジビエ肉って?

「獣臭い」、「生臭い」といった印象を持たれていることも多いジビエ料理ですが、その味は捕獲された場所や、どのように狩猟されたかで大きく変わるようです。また家畜と違い、成長した自然環境や食べていたものにより、肉質が大きく左右される食材です。

どのように捕獲されたかで味が変わる

「どのように捕獲したか」については非常に重要なことだという。

なぜならば銃弾が肉に当たってしまうと血が回ってしまい、一気に生臭くなり売り物にならないからだ。

そのため、銃弾が耳から逆側に貫通して仕留めたジビエは肉に血が回ることなく、美味しくいただけるのだそうだ。

個体差による味の違い

一般的に猟期は冬場に設定されるが、厳冬期にはイノシシのオスは発情期を迎え、味が落ちると言われる。シカなども春の若芽を好んで食べるので旬は夏とされている。猟の盛りとなるはずの冬場に、万人が喜ぶような食肉ばかりが獲れるとも限らない。
そもそもジビエ肉は味の個体差が大きい。以前ハンターから「(雑食の)イノシシなんかはうちの近所でも山ごとに味が違う」という話を聞いた。

美味しいジビエ料理を提供するお店を見分けるコツを、自身も狩猟に出かけて食材を調達する、ジビエ料理店のシェフが語っています。

「ジビエについて消費者の方にはわかりづらい部分が多いと思いますので、どれだけシェフが意識を高く持っているかを判断するのがいいと思います。
具体的には、『銃弾は鉛を使用していないか』『産地の安全性は確保できているのか』など、どのような方法や場所で捕獲したジビエなのかを聞いてみるのがよいのではないでしょうか」

食べてみたいジビエ肉ランキング

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社の運営する「Potora」にて、会員を対象に「食べてみたいジビエ肉は!?」というアンケートを募りました。

ジビエの中でもメジャーどころが上位に

ランキングの結果、ジビエの中でも割とメジャーなシカが1位、1票差でイノシシが2位にランクイン。イノシシは「豚との違いを味わってみたい」とのコメントも。3位のウサギについては「昔飼ってた白兎の塩焼きは美味しかった。」とすでに体験済みの方のコメントも付いていました。
4位以降には、あの凶暴な肉食動物が上位に入っていたり、逆に街中でよく見かけるあの鳥は得票数0票だったりと面白い結果になっています。気になる4位以降の結果はこちらからご覧ください。

おすすめジビエ料理

まだまだ一般的な飲食店では見かけることは少なく、スーパーやコンビニなどでも容易に買うことの出来ないジビエ料理。しかし徐々にですが、美味しいジビエ料理が食べられる機会が増えてきています。

ミート&ジビエ フェア(全国のイケアストア)

11月8日から12月3日までの間、IKEA(イケア)各店では「ミート&ジビエ フェア」を開催。ショッピングの合間にボリュームたっぷりのジビエ料理を堪能できます。

イケアのミート&ジビエ フェアでは、噛むほどに旨みが増すローストビーフや、豚肉の甘みをハーブが引き立てるポルケッタ、思わずかぶりつきたくなるクリスピーなチキン&チップスに、生ハムが入ったミートプレートが勢ぞろい。さらに野性味あふれるジビエのソーセージ、イノシシ肉と鹿肉のソーセージ2種類が登場します。

星のや軽井沢「ジビエおでん」

星野リゾートではこの冬、ジビエ肉を使用した特別料理を提供するレストランがちらほら。その中でも長野県の「星のや軽井沢」では12月1日から2018年2月28日までの間、なんともめずらしい「ジビエおでん」を提供しています。

鹿の削り節である鹿節を使い、鶏がらスープに鹿のもも肉ミンチと野菜、赤みそなどを練り込み、約2日かけて仕込んだ“鹿出汁”。鹿もも肉約20キロからとれるのはわずか6リットルという滋味深い出汁で、じっくり煮込んだおでんだ。
冬は大根やかぶ、ごぼうなどの根菜がおいしい季節。昔から信州でも冬に根菜がよく食べられてきた。それらの野菜と一緒に煮込むジビエ肉は、4~5種類。
猪は角煮、ウサギやキジはミンチにして野菜につめ、おでんのタネに。ウズラやハト、ホロホロ鳥、アナグマなども入荷があれば食べることができる。

ロイヤルマリンコート「ごちそうジビエ トリュフ香る 鹿肉バーガー」(千葉県)

前述の日本ジビエ振興協会が推奨するパティに鹿肉を使用したハンバーガーが、海ほたるパーキングエリア内「マリンコート」で販売されています。12月中旬までの期間限定。

今回販売する商品は、国産鹿肉のバーガーパティを使用し、各種野菜にマスタードをきかせたソース、イタリア産の白トリュフオイルを組み合わせ、自社で開発・製造したバンズで提供します。
鹿肉バーガーのパティは、厚生労働省の野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)を遵守した施設で処理された安全・安心なジビエで、日本ジビエ振興協会の推奨を得ています。

飲食店以外でも、ご家庭で調理して味わうことのできるジビエ料理が販売されています。また変り種ジビエ肉はインターネットで買うこともできます。

ワニ肉のしゃぶしゃぶ

あまり食される機会の少ないジビエとして、ワニが挙げられるのではないでしょうか。

こちらは、いちばん美味しいと言われる「尾の身」で、およそ600グラム。すでに皮がむいてあるため「爬虫類っぽさ」はなく、メカジキやクエのように巨大な白身魚のよう。鶏むね肉にもちょっと似ている。
白石さんいわく「しゃぶしゃぶにする時はできる限り薄切りに」とのことだが、筋肉の繊維がかなりしっかりしており、やや切りにくい。
薄切りするのに苦戦したので「結構硬い肉なのでは...」と思って食べてみたら、火を通すとぷりぷりの食感に。
歯ごたえはしっかりあり、噛むほどにうま味が染み出してくる。

SOHOLM GIBIER CURRY(スーホルム ジビエ カレー)

今回発売されるのは、大分県産の鹿肉を使った「欧風カレー」「キーマカレー」と、長崎県島原半島産の猪肉を使った「グリーンカレー」「バターカレー」の4種類で、いずれも野生の鹿、猪の肉を使っている。

より肉の食感や味をダイレクトに感じたい方には、「毛利の鹿!BBQセット」がおすすめです。

毛利の鹿!BBQセット

広島県安芸高田市の鹿モモ肉4種(+1種)がブロックのままどっさり届くワイルドなセット。大人数のグループキャンパーやコアなアウトドアフリークをターゲットにしたジビエ関連の新アイテムです。
セット内容は全てブロックで
・外モモ
・内モモ
・シンタマ
・ランプ
・スネ肉(Lサイズセットのみ)
ひとくくりに「モモ」としてまとめられがちな4種の部位(+スネ肉)を、それぞれの違いを確かめながら大人数でワイワイ楽しんでもらう趣旨。

ジビエ料理のレシピ

楽天レシピでは、ジビエ料理のレシピ35品(2017年11月現在)が公開されています。食材の調達にひと手間かかるかもしれませんが、気になるジビエ料理があれば挑戦してみてはいかがでしょうか。

自分で調理する際の注意点

ジビエはウイルスや菌、寄生虫などを含んでいるリスクがあるため、生食は絶対NG。十分な加熱処理が必要です。
食べ慣れていない、調理する機会の少ない食材だけに正しい調理法と知識を身に付けて料理をしたいですね。

厚労省が14年11月に発表した「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」には、「生食用として食肉の提供は決して行わないこと」と明記されている。過去には、ジビエの生肉を食した男性がE型肝炎ウイルスに感染し、死亡したケースもある。ジビエの危険性については、まだまだ周知されていないのが実情だ。
(3)飲食店営業等が野生鳥獣肉を仕入れ、提供する場合、食肉処理業の許可施設
で解体されたものを仕入れ、十分な加熱調理(中心部の温度が摂氏 75 度で 1
分間以上又はこれと同等以上の効力を有する方法)を行い、生食用として食肉
の提供は決して行わないこと。

「ジビエ」は害獣をただ駆除するだけではなく、食すことで命を無駄にせずに「ありがたくいただく」もの。その思いが全国に広がりつつあります。日本ではまだ発展途上の食文化ではありますが、これを機に試してみてはいかがでしょうか。