特集2017年8月11日更新

ヒアリだけじゃない!海外からの“侵略者”たち

画像 外来種写真集 / 日本の外来種対策

「ヒアリ上陸」のニュースが騒がしくなっていくのに伴い、目にする機会が増えてきた「外来生物」や「外来種」という言葉。その中でも危険とされる「侵略的外来種」の一部を紹介していきましょう。

外来生物とは

人間の活動によって他の地域から入ってきた生物

国立環境研究所が提供するデータベースサイト「侵入生物データベース」によると、外来生物(侵入生物)について、「人為的に運ばれた生物のこと」としています。

人間によって自然分布域以外の地域に移動させられた生物を「外来生物 / 外来種」「侵入生物 / 侵入種」「移入生物 / 移入種」などといいます. 貿易大国の日本では,これまでに2000種を超える外来生物が記録されています. 外来生物は,移動先で繁殖集団を形成し(定着または帰化と呼ばれます),その土地の生態系・農林漁業・人間の健康や日常生活などに対して影響を及ぼすことがあります.

この解説文にあるとおり、外来生物を指す言葉には「外来種」「侵入生物」「移入生物」などがあります。本ページ上では参考にしたサイトの表現に準じて「外来生物」か「外来種」で説明していきますが、同じことを指していると思ってください。

大型動物から微小生物まで様々

外来生物には,大型動物(ヤギ等)・ 木本植物(ギンネム等)もいれば, 微小生物(線虫類,各種病原体等)も含まれます.

「ネコ」や「ウサギ」も指定されている

後ほど紹介する、国内・海外の生態系などに大きな影響を与えているとされる外来生物のリスト「日本の侵略的外来種ワースト100」及び「世界の侵略的外来種ワースト100」の中には「イエネコ(ノネコ)」や「アナウサギ」の名前もあります。アナウサギは別名、カイウサギともいいます。どちらも、人間が飼っていたものが野生化したもので、旺盛な繁殖力と食欲で在来生物の生態系に大きな被害を出しているといいます。

「外来生物=海外から持ち込まれた生物」とは限らない

「国内由来の外来種」も

「外来」という言葉に引っぱられて「外来生物=海外から日本に持ち込まれた生物」と思ってしまいそうですが、日本国内で自然分布域の外へ運ばれて持ち込まれた場合なども外来生物になります。

たとえばカブトムシのように、本来は本州以南にしか生息していない生物が北海道に入ってきた、というように日本国内のある地域から、もともといなかった地域に持ち込まれた場合には、“外来種”となり、もとからその地域にいる生物に影響を与える場合があります。このような"外来種"のことを「国内由来の外来種」と呼んでいます。

法律で規制されている「特定外来生物」

「外来生物法」で取扱いを規制

日本にやってきて定着した外来生物の中には、地域の生態系や人間の健康、農林水産業などに大きな被害を及ぼす生物もいます。こういった外来生物による被害を防ぐため、日本では「外来生物法」が2005年に施行されています。

ヒアリのような外来種による被害を防ぐために、日本では「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」という法律があります。「外来生物法」などと省略されて紹介されることもありますが、正しくはこの通りです。
この法律では、生態系や人の生命や身体、農林水産業に被害が生じるおそれのある外来生物につき、国が「特定外来生物」と定めて、飼ったり、持ち込むことを禁止しています。

なお、外来生物法が定義する「外来生物」は、「海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物」であり、当然ながら「特定外来生物」も海外から日本に持ち込まれた生物(国外由来の外来種)に限定されます。

「侵略的外来種」も

外来生物法が定める「特定外来生物」のほかに、これまで何度か参考にしてきた環境省の特設ページ「日本の外来種対策」が用いているように、「侵略的外来種」という表現もあります。

外来種の中で、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるものを、特に侵略的外来種といいます。具体的な例としては、沖縄本島や奄美大島に持ち込まれたマングース、小笠原諸島に入ってきたグリーンアノールなどがあげられます。

言葉の定義の解説が長くなりましたが、次のブロックでは「特定外来生物」や「侵略的外来種」の中から、特に危険とされているものや注目されている外来生物をピックアップして紹介していきます。

危険&注目の外来生物

まずは、1995年に大阪府で発見された際には「ついに日本へ上陸」と、最近のヒアリと同じように連日ニュースを賑わせていた「セアカゴケグモ」。いつの間にやら42都道府県で確認されていて、一部では定着まで確認されているようです。

セアカゴケグモ

定着段階分布拡大期~蔓延期
特に問題となる被害人体
原産地オーストラリア
国内分布42都道府県で確認(2016年10月7日現在)
生息環境都市部、住宅地など

形態や特徴

・毒性が強く、有害なのは雌のみで、雄は毒が弱い。
・全体が黒色で、大きな球状の腹部の背面に目立った赤色の縦条がある。
・腹面に赤い砂時計状の模様がある。

咬まれた時の症状

●局所の疼痛、熱感、痒感、紅斑、硬結、区域リンパ節の腫張が生じます
●通常は数時間から数日で症状は軽減しますが、時に脱力、頭痛、筋肉痛、不眠などの全身症状が数週間継続することがあります
●重症例では、進行性の筋肉麻痺が生じます

咬まれた際の対処法

被害を受けた場合は、「傷口を流水や石けん水で洗って医療機関を受診すること」「受診の際はクモの種類を特定するために可能ならば殺したクモを持参すること」が推奨されています。

カミツキガメ

定着段階分布拡大期~蔓延期
特に問題となる被害人体、生態系(捕食・摂食)
原産地カナダ南部から南アメリカ大陸北西部
国内分布千葉県、静岡県で定着
生息環境池沼、河川など

形態や特徴

・甲羅の長さは最大で約50cm。
・甲羅には3本のやや発達して盛り上がった線(隆条)がある。
・尾側の甲羅の縁はギザギザしている。
・腹側の甲羅は小さく十字型をしている(カミツキガメ科の特徴)。
・四肢は強靭で頭部が大きい。

人体・環境への影響

捕食による淡水生物相への影響,競合による在来の淡水カメ類への影響.漁具の損壊.ヒトへの咬傷.
影響を受ける在来生物:水草や水生昆虫,ザリガニ,カニ,エビ貝類,ミミズ,ヒル,淡水カイメン,魚類,カエル,ヘビ,小型のカメ類などさまざまなものを採食するため,淡水生物相に広く影響が及ぶ.

咬まれた場合は大怪我も

陸にあげられた個体は攻撃的で、首の伸びが素早く、大型個体に咬かまれた場合は大怪我が想定される。

ただ、「原産地では明らかな人的被害は生じていないらしい」という情報も。

「芸人が書類送検」で有名に

「カミツキガメってなんか聞いたことあるような…」という人もいるのではないでしょうか。このカメは、2014年にお笑いコンビ「どぶろっく」の江口直人が無許可で飼育していたとして書類送検され、罰金30万円の略式命令が出されたことで一時有名となりました。

ツマアカスズメバチ

定着段階定着初期/限定分布
特に問題となる被害人体
原産地南アジア~東南アジア~中国南部
国内分布長崎県対馬市で分布拡大。福岡県と宮崎県でも確認
生息環境森林、農耕地、住宅地

形態や特徴

体は全体的に黒っぽく腹部の先端がオレンジ色。
女王30mm、オス24mm
働きバチ20mm前後
食性:すべての昆虫.ハエ類やミツバチ類,トンボ類をよく捕える.巣に近づくと攻撃的になり,毒針で刺し執拗に追跡する.

懸念される影響

●生態系への影響
 在来のスズメバチの減少や捕食される昆虫の減少による生態系のかく乱
●農林業(養蜂)への影響
 飼育ミツバチへの攻撃、養蜂や受粉への被害
●人への影響
 在来のスズメバチと同様、人への刺傷被害
侵入した韓国では,在来スズメバチ類と競合し激減させている.在来昆虫類の捕食による送粉系サービスへの被害が懸念される.

韓国やヨーロッパで猛威 死亡例も多発

日本の在来種に比べてはるかに攻撃的で、繁殖力もケタ違い。すでに韓国やヨーロッパでは猛威を振るっており、刺された人の死亡例が多発しているのはもちろんのこと、在来昆虫を根こそぎ食い尽くす恐れもあるという。

アライグマ

定着段階分布拡大期~蔓延期
特に問題となる被害生態系(捕食・摂食)
原産地北米~中米
国内分布ほぼ日本全国
生息環境都市部から森林、湿地、水辺

「ラスカル」の影響でペットとして流通するも…

大ヒットアニメあらいぐまラスカルの放映後、その可愛いらしいイメージからペットとして多く輸入されるようになったのだが、実は気性が荒く凶暴。ラスカルのような癒しキャラではないのだ。そのため飼い主が逃がしたり、または手先の器用さから飼い主から逃亡したアライグマが野生で繁殖。農家の作物を荒らす被害が続出している。

生態系から農業、感染症まで…大きい影響範囲

在来中型哺乳類との競合,鳥類への営巣妨害・営巣放棄,野生生物の捕食,食性や営巣場所の競合,農業被害(特にトウモロコシ被害が深刻.ナス・トマト・エンドウなどの野菜類,メロン・スイカ・イチゴなどの果実類,コイなどの養殖魚,家畜飼料,ビニールハウスの破壊など).文化財を含む建造物への侵入・損壊,人獣共通感染症を含む病原体の媒介(狂犬病,ジステンパー,アライグマ糞線虫 Stronglyloides procyonis,アライグマ蛔虫 Baylisascaris procyonis,インフルエンザ,日本脳炎,レプトスピラ,紅斑熱群リケッチア,サルモネラ など)

中枢神経障害を引き起こす可能性も

アライグマ回虫を人が経口摂取すると、中枢神経障害を引き起こすことがあるが、国内の野生化した個体からは検出されていない。

国や各自治体が積極的に防除対策

分布が全国的に広がっている上に、生態系や農業被害など問題が広範囲かつ深刻であることから、環境省をはじめ、各自治体も積極的に防除に取り組んでいます。

アカミミガメ(ミドリガメ)

定着段階分布拡大期~蔓延期
特に問題となる被害生態系(競合)
原産地北米
国内分布小笠原を除くほぼ日本全国
生息環境池沼、湖、河川、湿地など

祭りの屋台でおなじみの「ミドリガメ」

上で紹介したアライグマと同じような立ち位置といえるのが、アカミミガメです。通称の「ミドリガメ」でよく知られていて、祭りの屋台で見かけたことがある人や飼ったことがある人は多いのではないでしょうか。ペットショップなどでも安価で大量に売られていることから、遺棄や逸走が頻繁に生じていると考えられています。
正確にはミシシッピアカミミガメ、キバラガメ、カンバーランドキミミガメの3亜種がいて、中でもミシシッピアカミミガメは流通量が多く、多数が定着して野外での繁殖も確認されています。

「ミシシッピアカミミガメという名称から分かるように、ミドリガメはもともと日本にいなかった外来種です。日本の自然に放つと、地域固有の生物や生態系を破壊することにつながります。ミドリガメを近所の川に放流することは、もともとそこにいた在来のカメや水生植物、魚類などに影響を与えますので、絶対にやめてください」

生態系への影響

●ペットとして飼育されていた個体が野外に放たれることなどにより、北海道から沖縄まで全都道府県に分布。
●在来のカメ類と餌等を巡って競合し、定着地域では在来のカメ類や水生植物、魚類、両生類、甲殻類等に影響を及ぼしていると考えられる。
●レンコン畑のレンコンの新芽食害等の農作物被害の報告がある。

「特定外来生物」に指定できない問題

アカミミガメは流通量があまりに多いことから特定外来生物への指定が見送られた経緯があります。
ただ、環境省は「アカミミガメ対策推進プロジェクト」を立ち上げるなどして、野外への大量の遺棄の防止や防除などについて対策を進めています。

カナダガン

定着段階分布拡大期~蔓延期
特に問題となる被害生態系(交雑)
原産地北米
国内分布国内で確認されていた全個体の駆除が完了(2015年12月)
生息環境湖沼、河川など

形態や特徴

・全長最大110cm。
・頭から頸は黒く、頬から喉に白斑がある。
・嘴は黒い。
・背と翼は黒褐色で、淡褐色の羽縁に線が見られる。
・胸と腹は白色。
・足は黒色。

懸念される影響

増殖率が高く放置しておくと個体数の増加、生息域の拡大を招き近縁種であるシジュウカラガン(絶滅危惧IA類)等との交雑といった遺伝的攪乱や農業被害が懸念されます。
・人への咬傷。
・羽で打たれることによる打撲や骨折。

2015年12月に国内から根絶

関係者間の連携することで、日本国内で定着が確認されている個体の防除が完了しました。これまで、日本に定着した特定外来生物について根絶した事例はなく、カナダガンが日本で初めての根絶事例となります。

ただ、把握できていない個体が国内に生息している可能性があるとして、環境省は現在もモニタリングを継続するとともに目撃情報の提供を呼びかけています。

マダラコウラナメクジ

定着段階定着初期/限定分布
特に問題となる被害生態系(競合、捕食・摂食)
原産地ヨーロッパ
国内分布北海道、本州の一部に侵入、定着も確認
生息環境都市部、住宅地、農耕地、河川敷など

最大で20センチ ヒョウ柄の巨大なナメクジ

マダラコウラナメクジは、約10年前に日本への侵入と定着が確認された新しい移入種のナメクジです。特徴は背面のヒョウのようなマダラ模様と、その大きさです。体長は大きいもので約20 cmに達します。

画像などは自主規制しますが、ご覧になりたい方は次のリンク先でご確認ください。

他種のナメクジに対して高い攻撃性

海外では他種のナメクジに対して高い攻撃性を持つことや、園芸植物や農作物への被害の報告がある。

非常に短期間で北海道内に分散中

同研究以前に分布が確認されていた北海道内の2地点(札幌市円山公園付近および江別市))以外にも、岩見沢市、北広島市、芦別市、八雲市、室蘭市、島牧村に、すでにマダラコウラナメクジが分布していることが明らかになった。目撃情報の多くは札幌市内か札幌市に隣接した地域に集中していたが、芦別市、八雲市、室蘭市、島牧村は、それぞれ遠く離れており、発見されてから非常に短い期間で北海道内の広域に分散しつつあることが示された。

藤田ニコルがペロリと食べて話題に

『ダレトク』出演当初の藤田は、泣きべそをかきながらケムシやタニシを食べていましたが、今年2月放送の回では、『クモヒトデ』の唐揚げや『マダラコウラナメクジ』という巨大ナメクジを湯引きしてご飯と一緒にペロリと平らげていました。しかも食べた後の食レポは『マズくはない』。

外来生物をめぐる話題やニュース

ここからは、外来生物をめぐる様々な話題を紹介していきましょう。

テレ東「池の水ぜんぶ抜く」が大好評!

池の水を全部抜いて外来生物を駆除する奇抜な番組

正式な番組タイトルは放送回によってまちまちですが、通称で「池の水ぜんぶ抜く」と呼ばれているテレビ東京のバラエティ番組が「面白い!」と評判です。

同番組は3回目を迎える人気シリーズで、地方の名もない小さなの市町村の環境悪化に悩む沼や池の水を全部抜き、同時に日本の生態系を脅かす外来種生物の駆除も行うというユニークな内容で注目を集めている。

「イッテQ」の裏で異例の高視聴率

『池の水ぜんぶ抜く!』は、25日に第3弾を放送。平均視聴率20.3%を記録した『世界の果てまでイッテQ!』(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)の裏にもかかわらず、9.7%と健闘した。なお、第1弾(1月15日)は8.3%、第2弾(4月23日)は8.1%で、第3弾がシリーズ最高だった。

「なんでこんなに面白いんだ!?」絶賛の声

ただ「池の水を抜く」だけの番組だが、視聴者には今回も大ウケ。「なんだろうこのワクワク感!」「テレ東のこういう独自路線をいくセンスが大好きなんだよな」「池の水抜くだけなのに、なんでこんなに面白いんだ!?」と、SNSを中心に“テレビ東京らしい”企画力を絶賛するコメントが多く上がった。

「名古屋城のお堀で捕獲」で話題のアリゲーターガー

5月17日に名古屋城の外堀で外来魚「アリゲーターガー」が捕獲されたニュースが話題となりました。
アリゲーターガーは鋭い歯を持つ肉食でどう猛な魚であるため、生態系を壊す恐れがあるとされています。

あまりに巨大に成長することから家の水槽では持て余してしまった人が川に放流してしまうケースが増えているのだとか。いま各地で目撃されているのは、そういった無責任な飼い主によるもの。アリゲーターガーは外来肉食魚であり、本来の生態系が乱れてしまうことも懸念されている。
「アリゲーターガーは、食欲旺盛で雑食。小さな魚からコイ、ザリガニ、なかにはネズミまで食べるやつもいるぐらいです。繁殖力はそこまでありませんが、寿命は長い。下水の温かさで冬を越し、さらに大きくなっている」

近く「特定外来生物」に

アリゲーターガーは、「世界最大級の淡水魚」ともいわれる体の大きさとワニのように大きな口が特徴的で、その見た目から咬みつかれそうな恐怖を感じる人が多いようです。
なお、各地で被害が出ていることから「特定外来生物」に指定される予定です。

環境省『日本の外来種対策』によると、アリゲーターガーを含むガー科の魚は、平成30年(2018年)2月に“特定外来生物”に指定される予定。4月から飼養・運搬、譲渡、輸入などの規制が開始。すでに飼養などをしているものについても申請が必要となるそうだ。

「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれているコイ

コイの駆除のためアリゲーターガーを導入

アリゲーターガーの話をしたところで、関連してコイの話を。
日本では観賞用としても親しまれているコイですが、アメリカでは生態系を破壊する迷惑な外来生物という立ち位置だそうです。

日本ではごく普通にどこにでもいるコイという魚や土手などに生えているクズという植物でも、本来生息・生育していなかったアメリカでは、「侵略的」な外来種だといわれているそうです。
米国は数十前に水質汚染の改善のため外来種のコイを導入した。コイにより水質は改善されたものの、天敵がいなかったコイは急激に繁殖し、生態系を破壊。米国はコイの駆除のためにアリゲーターガーを導入した。

また、コイは「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれていて、世界的には侵略的外来種なのです。

私が育った神奈川においては止水環境に生息する水草が特に危機的状況でした。その一因はコイにあると考えられています。現に諸外国ではコイの導入により水草の池から植物プランクトンの池へと環境がシフトし生物多様性が下がったという事例が報告されています。またIUCNの世界ワースト100の外来種にきちんとコイは載っています。日本においてもコイの存在が水草にインパクトを与え、トンボ類の多様性に影響を与えていることが報告されています。

えっあの身近な食材も?日本在来の「侵略的外来種」

日本在来の侵略的在来種は、コイだけではありません。前述の「世界の侵略的外来種ワースト100」のリストを見ていると、意外な名前も出てきます。

日本原産のワカメも「侵略的外来種ワースト100」に

生物多様性や人間の活動に対する影響の深刻性の観点から選定される同リストには、ヒアリのほか、オオクチバス(ブラックバス)、ヒトスジシマカ(ヤブカ)も入っているが、意外なものも名を連ねている。ワカメだ。
日本が原産のワカメだが、タンカーなどの貨物船がバランスを保つために船底のタンクに注入するバラスト水を通じて、胞子が世界各地に広がったとしている。
日本ではみそ汁の具など、日常的に食べられているワカメだが、韓国などを除くその他の地域ではほとんど食用になっていないという。
このため、ロープや船舶などの人工物の上にも育ち、カキやホタテなど水産物の養殖にも被害を与えるとしている。

また上記の記事はワカメの他にも、日本在来種のコガネムシ「マメコガネ」がアメリカで大きな被害を出していることも紹介してます。

外来生物の被害拡大を防ぐには?

「外来種被害予防三原則」を心に留めて行動を

最後に、今回のまとめとして、侵略的な外来生物を日本で増やさないための対処法に触れておきましょう。

外来生物による被害対策は環境省や各自治体が進めていますが、一度定着した外来生物が及ぼす被害を食い止めるためには莫大な経費や労力が必要となります。そこで、行政まかせにするだけではなく、私たち一人ひとりの心がけによって未然に予防することも重要です。
私たちが心がけるべきことについては、環境省が作成している「外来種被害予防三原則」が参考になります。これは以下の3つです。

1.「入れない」

悪影響を及ぼす恐れのある外来種を、自然分布域から非分布域へ「入れない」。

どんな影響を及ぼすかわからない外国の生きものは、むやみに日本に持ち込まないことが大切です。
海外旅行に行ったときには、生きものをむやみに持ち帰らないようにしましょう。
また、靴の裏などに土や植物の種がくっついていて、気づかずに持ち込んでしまうこともあるので、注意が必要です。

2.「捨てない」

飼養・栽培している外来種を適切に管理し、「捨てない」(逃がさない・放さない・逸出させない)。

ペットとして飼われている生きものが野外に捨てられた時に、その生きものがどんな影響を及ぼすかはわかりません。
ペットは最後まで責任を持って飼うことが大切です。
生きものを飼うときには、最後まで飼い続けられるかどうかをよく考えてから飼いましょう。

3.「拡げない」

すでに野外にいる外来種を他地域に「拡げない」(増やさない)。

生きものが自分で移動できる範囲は限られていて、それ以上に拡げてしまうのは人間です。
ペットを捨てないだけでなく、すでに野外にいる外来生物は他の地域に拡げないために、運んだり、移動させたりしないことが大切です。
もし、捕まえた生きものを放すときには、もともといたところに帰してあげるようにしましょう。

見つけたら地方環境事務所などに相談

特定外来生物や怪しい外来生物を野外で見つけた場合は、地方環境事務所などの公的機関に問い合わせることをオススメします。


外来生物の中には、農作物や家畜、ペットのように、私たちの生活に欠かせない生き物もたくさんいますし、外来生物の繁殖が生態系の改善に貢献している例も報告されるなど、「外来生物=悪」と決めつける論調に異を唱える意見も以前から存在します。
このように定着したすべての外来生物が周囲に悪影響を及ぼすわけではありませんが、地域の生態系や人間の健康、農林水産業などに被害を発生させないよう、最近の「ヒアリ上陸」の話題をきっかけに「外来種被害予防三原則」を心に留めて生活していきたいものです。