特集2017年4月18日更新

どっちがいい!? キラキラネームvsシワシワネーム

近年、「芸能人の出産」「就職活動」など折々の話題に応じて論争を巻き起こしつつも、すっかり定着した感すらある「キラキラネーム」。その一方で、最近は「シワシワネーム」が少し話題になっているようです。そこでキラキラネームのトピックを中心に、シワシワネームや双方の比較などをまとめてみました。

ブームは過ぎた?「キラキラネーム」

「キラキラネーム」とは?

当て字を用いて、イメージや音(響き)で漢字を読む名前のこと。また、両親にとって深い思いを込められた名前といえます。一方で、「かわいい」「かっこいい」響き、読み方が先行してしまい、名前が“読めない”ことが特徴といわれます。

読める?これが「キラキラネーム」

1. 光宙(ぴかちゅう)
2. 七音(どれみ)
3. 一心(ぴゅあ)
4. 紗音瑠(しゃねる)
5. 詩羽楊(じばにゃん)
親はジバニャンの語源を知っているのでしょうか

2016年「キラキラネームランキング」

名前の百科事典サイト「赤ちゃん名づけ」が発表した「2016年年間キラキラネームランキング」のベスト5は以下の通り。

1位 唯愛 (「いちか」「ゆめ」など)
2位 碧空 (「みらん」「あとむ」など)
3位 優杏 (「ゆず」など)
4位 海音 (「まりん」など)
5位 奏夢 (「りずむ」など)

ランキングは30位まで発表されていて、11位の希星(きてぃ、きらら)や18位の紅葉(めいぷる)、19位の黄熊(ぷう)など、読み方が難しく個性的な名前が並んでいます。

わが子に「キラキラネーム」をつけた芸能人

土屋アンナ

第3子となる長女を「星波」(せいな)と名付けたことを明かした。
土屋は昨年11月に再々婚しており、子供は全員父親違いで、長男を澄海(すかい)、次男を心羽(しんば)と命名している。

杉浦太陽・辻希美

長女・希空(のあ・8)、長男・青空(せいあ・5)、次男・昊空(そら・3)である。2007年に結婚し、3児の親となった杉浦・辻ちゃん夫婦。それぞれ「空」がつくキラキラネームで、昊空と希空にいたっては2013年の「キラキラネーム アクセスランキング」(リクルーティングスタジオ)で見事1位と3位にランクインした。

本木雅弘・内田也哉子

子供は上から雅楽(うた・19)、伽羅(きゃら・17)、玄兎(げんと・6)と、個性的かつ雅な名前揃いである。本木本人によれば、次男の名前の由来は「くろ(玄)く、しずかな宇宙(そら)に、光を放つ月の情景を想像し、玄兎とした」

松嶋尚美・ヒサダトシヒロ

2008年にロックバンドのボーカル、ヒサダトシヒロ(46)と結婚した松嶋尚美(44)の子どもは長男・珠丸(じゅまる・5)、長女・空詩(らら・3)と完膚なきまでのキラキラネームである。

松本人志(ダウンタウン)

2009年に元タレントの伊原凛(33)とゴールインし、同年、第一子となる長女が誕生。子どもの名前はひらがなで「てら」と名付けた。松本本人が「地球のことをテラといいますよね」という通り、ラテン語の「地球」からとったようだ。

富川悠太(テレビ朝日アナウンサー)

富川アナは結婚しており、2人の子供がいるのですが、その名前が話題となっています。彼によると、人生にはリズム感が大事という意味で、長男は立夢(リズム)、次男には奏(かなで)と名付けたそうです。

藤本美貴・庄司智春(品川庄司)

第2子となる長女の名前を「羽沙(つばさ)」と名付けたことをブログで発表した。12年に誕生した長男・「虎之助」にちなみ、「虎に翼」(強い者がさらに強い力を持つ意)ということわざから名付けたという。
藤本は「兄妹2人で仲良く2人で怖いものがないくらい最強の兄妹になって欲しいと言う気持ちを込めました」「当て字になるからキラキラかな でも一生懸命考えて最高の名前をプレゼント出来ました」と想いをつづっている。

小原正子(クワバタオハラ)・マック鈴木(元野球選手)

ブログで、「赤ちゃんの名前ですが、『せいきち』と呼んでいます!(ほぼほぼ、これで決定とおもう)」と名前を公表。「夫の名前『誠』という漢字を入れたい私。だったら『誠吉 セイキチ』がいいという夫。そこで名前の画数にこだわる私」とすり合わせを行い、結果漢字は「誠希千」になったという。

「キラキラネーム」は大人になって苦労する?

キラキラネーム増加のきっかけは「たまごクラブ」

キラキラネームが増え始めたのは1990年代半ば頃からだといい、そのきっかけのひとつはマタニティー雑誌「たまごクラブ」であると、名づけ文化の専門家は語っています。

1993年、「悪魔」と命名された子供に対し、行政がこの出生届を認めなかったように、戸籍法には人名に使える漢字の規定がある。しかし、読み方については特に規定がなく、漢字をどう読ませても親の自由なのだ。だから、本来の読み方とかけ離れた名前をつけても法律上何の問題もないというわけだ。
『たまごクラブ』はそこに目をつけ、宇宙(こすも)や月(るな)など“当て読み”が可能であるということを世間に知らしめたのだ。

キラキラネームが増えた背景

キラキラネームをつける背景には、ひとえに「この子だけは特別」「他の子とは違う名前をつけたい」という親心が影響していると考えられますが、一人っ子など育てる子供の数が減ったことでより思いが強くなっているのかもしれませんね。
このほかにも、核家族化で周囲が名付けに口を出さなくなった、アニメやゲームの影響を受けた世代が親になった、親世代の稚拙化や学力の低下、名前に使える漢字が大幅に増えた、妊娠や出産による高揚感で思わず…といった複数の要因が指摘されています。

キラキラネームのマイナス面

親の愛や期待を受けて名付けられたキラキラネームですが、近年“お受験”や就職でのマイナス面も指摘されています。

「小学校などのお受験では不利になるケースがあります。キラキラネームの場合、“名づけた親は非常識な人間なのでは”という印象を学校側に持たれがちで、名門校になればなるほど敬遠されてしまうんです。名前のことで学校でいじめられ、子供が引きこもってしまった、というケースもありますから」
キラキラネームの学生は就職活動で不利だというのだ。
(中略)
ある大手メーカー役員は、「いいにくいことだが」と前置きし、「そういう名前を付ける親御さんの“常識”はどうしても本人に影響してしまうからね」と語った。

ライフネット生命保険が新卒採用関係者を対象に実施した調査によると、「キラキラネームが採用に有利」と答えたのはわずか3.3%であるのに対し、「古風な名前が有利」は14.5%と、相対的にキラキラネームは新卒採用で不利という結果が出ています。
また、キラキラネームはお受験や就職以外の場面でも困るケースがあるようです。

一番困るのはホテルに予約を入れる時です。特に『恭』の字を伝えるのが難しくて、数分かかってしまうこともある。これだけで人に迷惑をかけて生きている実感があります。キラキラネームは珍しかったり奇抜だったりするからいけないのではなく、読めないという欠陥があるから問題なのです。
漢字が当て字でなかなか読めない場合は、学校や職場で苦労することも多くなるでしょう。また、調査によると、女性的な名前を付けられた男の子は、学業や行動上の問題を起こすことが多くなるということです。

最近増えてる?「シワシワネーム」

「シワシワネーム」とは?

昔ながらの「太郎」や「花子」といった名前や、戦国武将のような名前を「シワシワネーム」と呼ぶそうです。

あえて古さを狙った「シワシワネーム」というのがジワジワと来ているようです。具体的には「○○子」や「○○男」など、昭和時代を彷彿させる懐かしいネーミングである。

「シワシワネーム」な芸能人

最近では、大野いと、門脇麦、芳根京子、小島藤子、杉咲花など、少し前に流行ったキラキラネームに対抗するよかのような、昭和・大正の香りのする“シワシワネーム”の女優たちが活躍しだして、その古風な名前の響きがよりいっそうミステリアスな魅力を高めています。

広瀬すず

黒木華

もはやご存知の方は多いと思いますが、読みは黒木「はな」ではなく「はる」です。

門脇麦

芳根京子

加護亜依…の長男

これは「芸能人本人の名前が…」ではなく、わが子に「シワシワネーム」つけたパターンです。元モー娘。の加護亜依が2月23日に長男を出産して「義継(よしつぐ)」と名付けたところ、「渋い」「時代劇に出てきそう」と話題を呼びました。

加護は愛息の名前の由来について、〈義 人として正しい道。継 続ける・つなげる。もし人生で道に迷った時は私達が与えた自分の名前を道しるべに生きて欲しい〉(3月1日付のブログ)と綴っている。

「シワシワネーム」が増えた背景は?

ここまで紹介してきた芸能人だけでなく、キラキラネームへの反動からかシワシワネームをつける親が増えているといいます。
この傾向は、前出の「赤ちゃん名づけ」の2016年「年間トレンド」(アクセス数の多かった名前)からもうかがえます。このランキングを見ると、男の子の10位に「一郎」、女の子の5位には「文子」がランクインしていて、どちらも2年前には100位以内(当時は男女別ではなかった)にすら入っていませんでした。

このように「シワシワネーム」が増えている背景について、命名の専門家は次のように分析しています。

「他の子供と同じ名前を付けたくないという気持ちからキラキラネームを選ぶ親が増えましたが、一方で『知的だと思われない』『就職に不利かもしれない』などとデメリットが盛んに報じられるようになった。そんな中、シワシワネームのほうが上品さや親の教養をアピールでき、メリットもオリジナリティも兼ね備えると思われるようになってきた」

「キラキラ」と「シワシワ」どっちがいいの?

キラキラvsしわしわ 子供に名前をつけるなら…

しらべぇ編集部が20~60代の男女326名に「子供に名前をつけるならキラキラネームより古風な名前を付けたいと思う」かどうかを調査したところ…

その結果、古風な名前を付けたいに「あてはまる」と回答した人が約6割、古風な名前よりキラキラネームを付けたいという人も約4割という結果が出た。

シワシワネームを持つ人にも苦労はある

キラキラネームにはマイナス面があり、就職でも古風な名前が有利といった点を上で挙げてきましたが、シワシワネームを持つ人にも苦労があるようです。
夏目漱石の孫で漫画評論家の夏目房之介さんは次のように語っています。

「若い頃は名前でだいぶ悩みました。古風な名前や堅い名前をもらった人には、“名前負けしてはならない”という格のある名前との戦いが待ち受けている。それに、武将系の名前だと『十河一存(そごうかずまさ)』(戦国武将)や『車斯忠(くるまつなただ)』(戦国~安土桃山時代の武将)のように、キラキラネーム同様、読みに無理があるものもある。むやみにつけると後で苦労するようなことになりかねないですよ」

最後に引用した夏目さんの言葉通り、日本では歴史的に「読めない名前」は当たり前で、女性の「~子」をはじめとした「古風な」「普通な」名前は、大正から昭和にかけてのごく最近の短い期間に定着した名前です。また、「~子」は最近では逆に珍しくて周りから浮いてしまう可能性も指摘されているように、何をもって「キラキラ」なのか「シワシワ」なのか「普通」なのかというのは、実は難しい問題なのです。
だからこそ、「キラキラネーム論争」は20年近く続いているのであり、今後もしばらくは終わりが見えない話題なのだと思います。
人の名前について他人がとやかく言うのは余計なお世話ではありますが、名前と一生付き合っていくのは親ではなく名付けられた子供自身。深い愛情と思慮をもって子供が胸を張って名乗れる名前をつけてあげてほしいものです。