特集2017年11月23日更新

ジンバブエ「世界最高齢の独裁者」めぐる混乱

あのハイパーインフレの代名詞となった「ジンバブエドル」の生みの親、ジンバブエのムガベ大統領が退陣しました。独立以来、40年近い長きに渡りジンバブエを統治してきましたが、経済的・政治的混乱をまねき、独裁者として国際的な批判を浴びていました。クーデーターによりわずか一月たらずで失脚するまでをまとめました。

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池上さん、ジンバブエのムガベ前大統領の後任はどんな人?

文春オンライン / 2017年12月12日 7時0分

Q ジンバブエのムガベ大統領が辞任。独裁からの脱却は?  1980年のジンバブエ独立以来、37年にわたって政権の座にあったロバート・ムガベ大統領が辞任を表明しました。 [全文を読む]

目次

アフリカ南部の国・ジンバブエで「クーデター」

11月15日、兵士が国営放送局を占拠 ムガベ大統領は自宅監禁

ジンバブエの首都ハラレで15日、兵士が国営放送局ZBCを占拠した。軍は、ムガベ大統領(93)の周辺にいる社会・経済的な苦痛をもたらす「犯罪者」が標的だとし、権力を掌握したと発表した。
隣国・南アフリカのズマ大統領は15日、声明で、ムガベ氏との電話で同氏が自宅で監禁下にあることを確認したと明らかにした。軍によるクーデターとみられる。

軍は「クーデター」を否定

軍報道官は「ムガべ氏周辺の、社会や経済に打撃を与えている犯罪者を法で裁くのが目的だ」とし、クーデターを否定。
アナリストらは、軍は批判を避けるため、自身の動きを全面的なクーデターではないものとして示したい考えだと指摘している。

背景に「93歳」ムガベ大統領の後任争い

副大統領と大統領夫人の争い 副大統領はムガベ氏が11月6日に解任

ジンバブエの政変は、ムガベ大統領が、妻のグレース氏(52)を自らの後任に据えようとする動きを見せ、これに軍部が強く反発したのがきっかけだった。
ジンバブエでは先週、ムガベ氏の後継者の一人とされていたムナンガグワ第1副大統領が解任されたことでムガベ氏が妻のグレース氏(52)に権力を委譲するとの観測が広がり、政治的な緊張が高まっていた。

国軍司令官は副大統領解任の受け入れ拒否

軍司令官の主な目的は、大統領夫人のグレース氏が大統領の後継となることを阻止することであるようだ。
チウェンガ国軍司令官は13日、ムナンガグワ氏の支持者の追放をやめさせるため「介入する」準備があると述べた。軍がムナンガグワ氏解任の受け入れを拒否すると表明した。
当局者によると、ムガベ大統領は14日にハラレで週次の閣僚会議に出席。ZANU─PFはその後、チウェンガ国軍司令官が反乱をあおる目的で「反逆行為」を行ったと非難した。

「クーデター」発生後の動き

16日、ムガベ大統領が辞任を拒否

軍によって実権を剥奪されたロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領(93)は16日、首都ハラレで開かれた軍将校らとの会合で辞任を拒否した。

同日、出国していた副大統領が帰国

今回の軍の行動は先週、エマーソン・ムナンガグワ(Emmerson Mnangagwa)副大統領が解任されたことが引き金となった。ムナンガグワ氏はその後、出国していたが、側近は16日、同氏がすでに帰国していることを認めた。ムナンガグワ氏は、ムガベ氏に代わり大統領の座に就く可能性がある。

17日、ムガベ氏が大学の卒業式に出席 身柄拘束後初めて公の場に

ジンバブエで17日、ロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領(93)が政変後初めて公の場に姿を現し、首都ハラレで行われた大学の卒業式に出席した。

18日、数万人が反大統領デモ 退陣は不可避の情勢に

首都ハラレでは18日、ムガベ大統領の退陣を求める集会が行われ、数万人が路上に繰り出してムガベ氏を批判。約37年間にわたり強権をふるってきたムガベ氏の退陣は不可避の情勢となった。

19日、与党がムガベ氏を党首から解任 党幹部の夫人も追放

ジンバブエの与党は19日、緊急会合を開き、国軍の事実上のクーデターで自宅軟禁下にあるムガベ大統領(93)を党首から解任した。
ムガベ氏の代表解任に加え、党女性部代表を務めるムガベ氏の妻グレース氏(52)の党籍を剥奪し、追放することも決めた。ムガベ氏の後任には、前副大統領のムナンガグワ氏(75)を選んだ。

同日、ムガベ氏は国民向け演説で辞任表明せず

ムガベ大統領(93)は19日、軍に軟禁されて以降、初の国民向け演説を国営テレビを通じて行ったが、辞任は表明しなかった。これに先立ち、ムガベ氏が演説で辞任を発表すると、一部で報じられていた。

21日、与党が大統領の弾劾手続き開始

ジンバブエの議会で21日、軟禁下にあるムガベ大統領の弾劾手続きが始まった。グレース夫人への権力禅譲を狙い、「憲法上の権限を悪用した」ことなどが理由。与野党議員の多くが弾劾賛成に回る見通しで、長年にわたりジンバブエを強権で統治してきたムガベ氏の退陣は不可避の情勢となった。

ムガベ大統領がついに辞任を表明

長期間に渡る支配体制に幕

ムガベ氏は1980年の独立以来37年間実権を握っていたが、前週に軍が蜂起。同氏が辞任要求に応じなかったことを受け、与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU─PF)は同氏に対する弾劾決議案を議会に提出し、議会で手続きが始まった直後にムガベ氏は辞任を表明した。
ムガベ氏は辞任を表明する書簡で後任は指名せず、ムデンダ議長は22日までに後任が決まるよう法的手続きを進めていることを明らかにした。
ムガベ氏は書簡で「ジンバブエの人々の安泰に関する懸念」と「スムーズで和平的、非暴力的な権力移行を確実にしたいとの強い願い」を辞任の理由に挙げた。決断は自発的なものだとも強調した。

喜びに沸く国民たち

議会でムガベ氏の辞任が発表されると、街頭はすぐに多くの人であふれた。同氏からの辞任表明の書簡が読み上げられた会議施設「レインボー・タワーズ(Rainbow Towers)」では、歓声を上げる群衆がムガベ大統領の写真を壁からはがして引き裂き、足で踏みつけた。
大統領辞任の一報が広まる中、男性らは踊り、女性らは歌い、涙を流す人も多数見られた。人々はジンバブエ国旗を掲げ、国軍による実権掌握を率いたコンスタンチノ・チウェンガ(Constantino Chiwenga)司令官をたたえる声を上げた。
「うれしくて言葉もない」「歴史的な日だ」。欧米メディアは、路上に繰り出して両手を高く突き上げたり、手を取り合って踊ったりする人々の姿を放映。お祭り騒ぎは深夜まで続き、長期にわたる圧政に苦しんだ人々の思いをうかがわせた。ムガベ氏辞任の端緒をつくった軍をたたえ、装甲車に乗った兵士と握手する人もいた。

後任にはムナンガグワ前副大統領が就任へ

ムガベ前大統領の辞任を受け、新たな大統領にムナンガグワ氏が就任するようです。ムナンガグワ氏は前副大統領でしたが、ムガベ氏に解任され、一時的にジンバブエ国外に出国していました。

ジンバブエのムナンガグワ前第1副大統領は、ムガベ大統領が辞任したことを受け、24日に次期大統領に就任する。国営ZBCが22日に伝えた。

「第2のムガベ」の声も

次期大統領に就任するエマーソン・ムナンガグワ氏。演説で「完全な民主主義」を約束したそうですが、彼はムガベ氏の最側近だった一人であり、体制が一新されるというわけでもなさそうです。また彼自身にも汚職や虐殺といった過去があるようで、国民からは危惧の声も聞こえてきているようです。

24日に新大統領に就くムナンガグワ氏だが、つい最近までムガベ氏の最も古参で最も近い側近の一人だった。与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)の強硬派の閣僚として知られ、ムガベ氏同様、反対派を抑圧し、自由を制限し、圧政を敷くのに腐心するのではないかと疑わせる材料もそろっている。

ムガベ大統領とは?

1980年以来、ジンバブエの実権を掌握する「世界最高齢の首脳」

ムガベ氏は1980年にジンバブエの首相に、87年からは大統領に就任し、37年もの長きに渡り同国の政権を握っていました。

ムガベ氏は現在の国名となった1980年以来、実権を掌握。大統領在職が30年に及ぶ世界最高齢の首脳としても知られる。2000年代に白人が所有する農場を強制収用するなどの強引な政策を進めたが、農業生産の低下などからハイパーインフレを招いた。

強権統治で敵を排除 「失業率9割以上」の経済混乱を放置

ムガベ大統領(93)は、黒人解放運動の闘士として知られたが、権力の座につくと手段を問わない強権統治で敵対勢力を排除し、国際社会の非難の的になってきた。国民を一顧だにせず失業率9割以上ともいわれる経済の混乱を放置してきた独裁者が、一夜にして瀬戸際に追い込まれた。

ハイパーインフレで悪名高い「ジンバブエドル」産んだ張本人

ジンバブエといえば、少し前まで2億3000万%とも言われる、ジョークのようなハイパーインフレで話題になっていました。

さて、このジンバブエという国ですが、実はつい2年前まで「100,000,000,000,000ドル札」というものがありました。0が多すぎてワケがわかりませんが、0が14個、100兆ドル札という笑っちゃうくらいの一見、バブリーな超高額紙幣です。

このハイパーインフレも、ムガベ氏の失政によるものが大きいと言われています。

その原因は1980年、初の黒人大統領となったロバート・ムガベ氏の独裁政権によるもの。
植民地時代に強奪された白人地主の農場を取り上げて黒人に分配したところ、農業のノウハウがなく食物不足に。さらに外資系企業に対して、保有株式の過半数を政府に譲渡させる法律を作ったため、企業はジンバブエから撤退。国から物資がなくなるという事態に。

この結果、当然ながら物価は上昇。さらにここから様々な法律が生まれ、また物価の上昇を抑えるために紙幣を作り…という悪循環で果てしないインフレの上昇が続き、ジンバブエの経済は破綻したのです。2013年には国庫金の残高が217ドルになるまで追い詰められました。結局、ジンバブエは自国通貨を放棄し、現在はアメリカのドルが流通することになりました。しかし、だからといってジンバブエの財政難がおさまるわけでもありませんでした。

ジンバブエは経済危機と、国内各地で餓死者が出る深刻な食糧不足に苦しんでいる。外貨代わりのダイヤモンドは底を尽き、友好国の中国ももはや、無利息融資の借り換えには応じてくれない。先月はついに、国軍兵士の給料も出なかった。

尊敬や称賛の一方で「独裁者」との批判も

ムガベ大統領は過去37年にわたりジンバブエを率いてきた。アフリカ大陸では尊敬を集める一方、欧米では独裁者などとして批判されている。
黒人の権利拡大を求めて政治運動に身を投じ、当初は国際社会から称賛される存在だったムガベ氏。最近では、「100歳になるまで大統領であり続ける」と語っていたという。

ムガベ氏失脚を受け、各紙が“ムガベ時代”を振り返った、統括的記事を配信してきていますので、いくつか紹介します。

浪費癖がある妻・グレース氏は国民から不人気

ムガベ大統領が権力委譲をしようとした妻のグレース氏は、浪費癖と暴力沙汰の噂などで国民から良く思われておらず、彼女の不人気が国民のクーデター支持に拍車をかけた面もあるのではという記事も。

あだ名は「グッチ・グレース」

グレース氏は、もともとは隣国・南アフリカの出身。ムガベ氏の秘書の一人で、1987年から交際が始まったとされる。ムガベ氏の前妻が92年に病死した後、96年に結婚した。浪費癖があるとされ、高級ブランドの名にちなんで「グッチ・グレース」の異名を持つ。国民からは不人気だ。
グレース氏はムガベ氏の下でタイピストとして働き始め、1996年に結婚、3人の子をもうけた。ロイター通信によると、当初から浪費癖が著しく、南アフリカのマンションや希少なダイヤモンドの装飾品などを買い求めたほか、子供のためにロールスロイスのリムジンを買ったりした。

今年8月には南アの女性モデルに暴行

今年8月、南アフリカ・ヨハネスブルクのホテルで、ムガベ夫妻の息子2人に会いに来た女性モデルのガブリエラさんに対し、家電の延長コードを使って暴行した事件が話題に。

夫人は部屋に入ってくるといきなりガブリエラさんを延長コードで殴りつけ、時には蹴り、罵声を浴びせ、髪を引っ張るなどの暴行を働いたという。周りいたボディガード10人は、彼女を助けることなくただ立って見ていただけだったようだ。
その後、ガブリエラさんは這いつくばって部屋から脱出、従業員らにエスコートされてホテルを出た。体中から流血しており、額を14針も縫う重傷を負ったという。

暴力沙汰では「ディスグレース」(面汚し)の異名も

今年8月には、南アフリカの女性モデルが「グレース氏に頭部などに暴行を受けた」と訴えたが、同氏は法廷に姿を見せずに雲隠れした。2009年にも、シンガポールで写真を撮ろうとしたカメラマンの顔面を何度も殴りつけたといわれる。こうした性格も相まって、「ディスグレース」(不名誉、つらよごしの意)とも呼ばれてきた。

このページを作成するにあたって、アフリカで長期政権を敷いている「独裁者」たちについても調べたのですが、30年以上の統治している人物が思った以上に多いことに驚きました。また、その多くは国が独立した時の中心人物でした。独立の英雄が長い統治の末に放蕩や弾圧を行うようになり、政治的・経済的混乱をまねき、いつしか独裁者と呼ばれるようになる…。ムガベ氏はまさにその道を歩み、結局同胞から追われることになりました。彼以外の「独裁者」たちは今、どうなのか?また今後どうなるのか?興味深いので、いずれ掘り下げてみたいところです。

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