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複数のシリコン量子ドットから発生する微小電流を世界最高精度で比較・制御する技術を開発 ~ 量子力学におけるオームの法則 “量子メトロロジートライアングル” の検証に向けて技術課題をクリア ~

Digital PR Platform / 2023年12月20日 14時30分

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[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/80814/700_335_202312191135166581016465601.JPG


1. 概 要 
 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)物理計測標準研究部門 量子電気標準研究グループ 中村 秀司 主任研究員、物理計測標準研究部門 金子 晋久 首席研究員は、日本電信電話株式会社(以下「NTT」という)藤原 聡 上席特別研究員、山端 元音 特別研究員と共同で、量子電流標準実現に向け、複数の量子ドット素子で、不確かさの小さな電流を発生することに成功しました。
 電流は1秒間に流れる電子の数で大きさが決まります。この技術では、ナノ加工によって作製した大きさが数十ナノメートル(ナノは1の10億分の1)程度の単一電子素子であるシリコン量子ドットで、電子を“一粒ずつ”制御します。今回実験グループは、二つの異なるシリコン量子ドットを精密に制御し、それぞれ1秒間に10億個の電子を運んで微小電流を発生させました。その結果、素子の違いによらず大きさのそろった一定の電流を発生させることに成功し、2つの電流値が電流全体の4×10-7以下の相対不確かさで一致している(これは、各素子において1秒間に運ぶ10億個の電子のうち、素子間の相違が400個しかないことを意味します)ことを確認しました。さらに、二つのシリコン量子ドットを並列に組み合わせることで、不確かさを同程度に保ったまま、2倍された電流を発生させることにも成功し、量子電流標準として必要な電流の範囲の拡張技術を確立しました。この精密な電流発生技術と電流比較技術はナノアンペア以下の微小電流計測の“標準”として役立ち、半導体微細加工や化学計測、放射線計測など電流計測を高精度化することに貢献します。
 なお、この技術の詳細は、2023年12月20日(日本時間14時)に「Nano Letters」に掲載されます。

2. 開発の社会的背景
 近年、微細加工技術や物理・化学などで利用される超高感度計測技術の発展とともに、フェムトアンペア(フェムトは1の1000兆分の1)からナノアンペア以下の微小な電流を精確に発生・測定することが求められています。現在、このような精確な電流測定を担保する電流の基準、すなわち“電流標準”は、量子力学的な現象を用いて実現される「量子ホール抵抗標準」と「ジョセフソン電圧標準」によって値を付けられた抵抗器と電圧源をオームの法則を介して結びつけることで実現されています。しかしながら、このような手法で実現される電流標準は、電流値が小さくなっていくにしたがって相対不確かさが大きくってなっていくという問題があります(図1左グラフ)。ナノアンペア以下の微小電流では10-3以下の相対不確かさを持った電流標準は現在も実現していません。医療のための放射線計測や化学のための粒子計測など、高精度計測に必要な微小電流標準の実現が待たれています。

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