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複数のシリコン量子ドットから発生する微小電流を世界最高精度で比較・制御する技術を開発 ~ 量子力学におけるオームの法則 “量子メトロロジートライアングル” の検証に向けて技術課題をクリア ~

Digital PR Platform / 2023年12月20日 14時30分

4. 研究の内容
 本研究では、微細加工技術によって大きさ数十ナノメートル程度の二つのシリコン量子ドット(素子A、素子B)を作製し、実験を行いました。素子の作製をNTTで行い、電流の精密測定を産総研で行いました。電流の発生には、まず二つのゲート電極に負の電圧を印加することで、シリコンのワイヤー中に量子ドットを形成します(図2左➀)。次にこの二つのゲート電極のうち片側に正の電圧を印加することで、シリコンワイヤー中のエネルギー障壁を低下させ、ソース側の電子を量子ドット内へと誘導します(図2左➁)。正の電圧を印加した電極に、今度は負の電圧を印加することで、ポテンシャルエネルギーを増加させ、量子ドット内に電子を一つだけ取り出します(図2左➂)。最後に負電圧を大きくすることで、量子ドットに閉じ込められた電子をドレイン側へと放出します(図2左➃)。この①から④の一連の動作を交流電圧によって連続的に行うことで、電子を一つ一つ移送して電流を発生させます。このとき発生する電流Iは、1秒間に運ばれる電子の個数f(個/秒)と電気素量e(1.602176634×10-19 C)の積(I = e×f )になります。図2右は、実際に二つの独立な素子によって、1秒間に10億個の電子を送り出し、発生させた電流をドレイン側の電圧に関してプロットした結果です。電流がゲート電圧に対して変化しない領域(電流プラトー)が形成されていることがわかります。実験では、この電流プラトーの精密な評価を行い、二つの素子ともに10-6以下の精度で理論的な値I=e×fと一致していることを確かめました。


[画像3]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/80814/700_448_20231219113516658101645d906.JPG


 この実験では、さらにこの二つの素子の電流の違いを精密に評価するため、特殊な検流計を利用して電流の直接比較を行いました。その結果、発生した二つの電流が、電流全体の4×10-7以下の相対不確かさで一致していることを確かめました(図3(a))。この結果は、二つのシリコン量子ドットから発生する電流が、素子の違いによらず一定の電流を生成できることを初めて示しました。さらに本研究では、互いに同じ大きさだと確認された電流を、素子を並列に並べることで足し合わせ不確かさを10-6程度に維持したまま電流の大きさを2倍できることも世界で初めて実証しました(図3(b))。

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