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複数のシリコン量子ドットから発生する微小電流を世界最高精度で比較・制御する技術を開発 ~ 量子力学におけるオームの法則 “量子メトロロジートライアングル” の検証に向けて技術課題をクリア ~

Digital PR Platform / 2023年12月20日 14時30分



[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/80814/700_317_20231219113516658101645a528.JPG



3. 研究の経緯
 このような問題を解決するため、単一電子素子と呼ばれる微小な素子によって電子を一粒ずつ制御することで、微小電流標準を実現しようという試みが行われています。電流の大きさは「1秒間に流れる電子の数」で決まるため、単一電子素子で電子を精確に一粒ずつ制御し、決まった個数の電子を導体上に流すことができれば、不確かさの小さな電流を実現することができます。この単一電子素子を用いた電流標準の研究は、1990年代に提案されて以来、各国の研究者による地道な研究が続けられ、現在では160ピコアンペア(ピコは1の1兆分の1)の電流をおよそ10-7の相対不確かさで発生することが可能になっています。微小電流のための実用的な標準を実現するためには、使用する素子の違いによらず一定の電流を発生する技術の確立が求められます。さらに、電流値の可変とより小さな不確かさを同時に達成する必要もあります。しかしながら、この単一電子素子の手法では、複数の独立した素子で一定の微小電流を同時に発生した際の、電流値の同等性・普遍性は検証されていませんでした。また、この手法では1秒間に流す電子の数を多くすると、電子の運び損ないが発生し電流の不確かさが大きくってなってしまうという問題もありました。
 産総研はこれまで、微小な電流に対する電流標準を実現するため単一電子素子の研究と微小な電流を精確に測定する精密電流計測技術を開発してきました。また、NTTはこれまでシリコン量子ドットを用いた電流標準の研究をすすめ、世界で最高精度の電流を発生させる量子ドットの作製技術を有しています。今回、NTTが作製したシリコン量子ドット素子と産総研が持つ精密電流計測技術を組み合わせることにより、二つの独立したシリコン量子ドットから発生した電流の大きさを精密に比較し、その二つが4×10-7程度の不確かさで一致していることを世界で初めて確かめました。さらにこの比較した電流を二つ足し合わせることで、不確かさを小さく保ったまま電流を逓倍(2倍)することに成功しました。
 なお、本研究開発は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業基盤研究S 「単電子制御による量子標準・極限計測技術の開発(2018~2022年度)」による支援を受けています。

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