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大河原克行のNewsInsight 第279回 サイボウズの「災害支援プログラム」、能登半島地震で語られたIT支援の実態

マイナビニュース / 2024年4月20日 9時0分

さらに、「災害時のシステム構築は、平時のシステム構築とは大きく異なり、経験やコツが必要になる」とし、「要求や要件、仕様は次々と変わる。想定外のこともたくさん起こる。たくさんの考慮を入れた完璧なシステムよりも、スピードと柔軟性を重視したシステム開発が必要である。すべてに対応すると、すべてが中途半端な対応になるため、人の命を守るといった優先事項に集中した対応と、それに必要なシステムが必要である」と提言した。

アナログでの情報共有が多いため、重要な職員の人手を使いながら、紙の情報をExcelに転記するだけで1日が終わったしまうという状況も現地では見られたという。また、避難者名簿のフォーマットが自治体によってバラバラで、年齢を聞くところと、生年月日を聞くところなどの統一感がなく、その結果、データの統合にもかなりの苦労を強いられたという。

「ITを活用して省力化し、余計な作業を減らし、その分の人手を、被災者の支援に使えるようにしなくてはならないことを実感した」と、柴田氏は指摘した。

さらに、被災地では、データを活用するために、様々な既存システムに関わる必要があることが災害発生後に顕在化したという課題をあげ、それらを事前に把握しておくこと、それを活用する自治体職員のITリテラシーを高めておくこと、自治体がIT企業と災害協定を結んでおくことを提言。「ITやDXが、地方のインフラにならないと、災害大国である日本において、真の災害支援はできない」と述べた。

建設業界では、自治体などと災害協定を結んでおり、災害時の役割を明確化したり、重機を使用した場合の費用を自治体が負担したりといったことが行われている。被災地支援が長期化すると民間企業の支援にも限界が生じるのが実態であり、IT活用においても、地元IT企業と、災害発生時の役割分担を明確化したり、費用面での支援も取り決めておくこともこれからは必要になるだろう。

被災地におけるサイボウズの取り組みは高く評価されるものだ。だが、業界関係者の間では、能登半島地震において、「果たしてデジタルは役に立ったのか」という疑問を投げかける声もある。そして、「役立ったのはStarlink だけではないか」との厳しい指摘もある。

その背景にあるのは、自治体や地方におけるデジタル化の遅れである。デジタルを活用した支援を最前線で経験してきたサイボウズが指摘するように、災害大国である日本では、災害時での利用を想定したITインフラの整備を視野に入れなくてはならないのは明らかだ。
(大河原克行)



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