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パンと一緒に食べるなら水よりビールのほうがいい…「糖質×糖質」が健康をもたらす血糖の最新研究

プレジデントオンライン / 2024年3月15日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pilipphoto

健康を維持しながらお酒を楽しむ方法はあるのか。北里大学病院糖尿病センター長の山田悟さんは「血糖値が心配で飲酒をやめると、かえって血糖値上昇を招くこともある。そうすると集中力の低下やイライラ、身体がだるくなる『糖質疲労』を起こしやすい」という――。

※本稿は、山田悟『糖質疲労』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■糖質ゼロビール、焼酎、ウイスキーなどはOK

お酒がお好きな方は、何を飲むかも重要ですよね。お酒について述べると、血糖の観点からは「お酒は楽しむべし」です。蒸留酒(焼酎、ウイスキー、ジン、ウォッカなど)は糖質ゼロなので、どのお酒も全く問題ありません。

一方、醸造酒は糖質を含みます。日本酒で1合あたりの糖質量は8~9gなので、主食を調整すれば2合までで晩酌が楽しめます。ビールについても、最初のジョッキ1杯(500ml)は気にせず楽しみ、2杯目からハイボールにチェンジするなど工夫してはいかがでしょうか。

糖質ゼロビールであれば、蒸留酒同様に全く問題ないことになります。ワインについては、辛口であれば、グラス1杯で糖質量は1gもありません。ボトル1/2本程度であれば糖質量としては5g前後です。

【図表1】調味料の糖質量選手権
出所=『糖質疲労』

さらに、お酒好きの方には朗報があります。オーストラリアの研究者たちが実施した、このような研究があります。

■パンと一緒に食べるなら、水よりビールのほうがいい

まず、最初に研究者たちは、アルコールドリンクを単品として飲んだ際に血糖値がどうなるのかを検証しました。すると、同じカロリー量で飲んだとき、ビールが一番血糖値を上げ、ワインとジンはほぼ血糖値に影響を与えませんでした(含まれる糖質量に応じて血糖値を上昇させていたので、予想どおりの結果でした)。

次に研究者たちが実施したのが、食事と一緒に飲むときに血糖値がどうなるかという研究です。パンと一緒に飲むドリンクとして比較した結果、ワインとジンが一番血糖値が上がらなかったのは当然なのですが、驚いたことに、パンとお水よりもパンとビールのほうが血糖値上昇が抑制されていたのです。

なぜ、糖質量では一番多くなるパンとビールよりも糖質量としてはワインやジンと同じになるはずのパンとお水のほうが血糖値を上昇させるのか、については明確な回答は出ていません。

私自身は、アルコールの作用で、肝臓からの糖新生(肝臓が24時間連続して行っているブドウ糖を血液に放出する作用のこと)が抑制されるからではないかと考えています。もちろん、バッカス(お酒の神様)がお酒好きたちを守ろうとしてくださっている可能性も捨てきれませんが……。

■おつまみにはからあげ、ローストビーフ、お刺身、湯豆腐を

ただし、知っておいていただきたいのが、適量飲酒という概念。アルコール飲料はWHOが認める発がん性物質です。アルコールの種類を問わず、純アルコール量として1日20g程度までがよしとされたりしています(各国で設定は異なります)。

また、梅酒や甘いジュースなどで割ったカクテルなどは糖質量が多いとお考えください。

そしてお酒はあくまでも食事をおいしく食べるための飲料です。

ハイボールとからあげ、ナッツ。ワインとチーズ、おいしいオリーブオイルをかけたカルパッチョサラダ。ロティ、ローストビーフ、お刺身、湯豆腐……。テーブルには、おいしいものをいっぱい並べてください。

繰り返しですが、ビールは単品では血糖値を上げます。お酒はお酒を飲むために飲むものではなく、食事をおいしくするために飲むものなのです。

【図表2】お酒の糖質量選手権
出所=『糖質疲労』

■ごほうびの「甘いもの」はどう食べる?

脳の健康、機能向上のために「甘いもの」を食べる必要があるとお考えの方も多いようです。その理由は、「脳細胞がブドウ糖を必要とするから」というものです。

確かに、脳細胞がエネルギーとして利用するメインは糖質です。

脳や脊髄、網膜など神経組織にある血管は、神経組織に血液から必要ないものが入り込まないように管理する、言わば「関所」のような機能を備えています。これが「血液脳関門」というはたらきで、脂質は血液脳関門を通過できません。

ほかには、赤血球もエネルギー源としてブドウ糖しか利用できません。脂質を燃やすために必要なミトコンドリアという細胞内器官が存在しないからです。

脳と赤血球が1日に消費する糖質量は約130g。体格や性別、運動量に関係なく、この量の糖質は身体としては必要ということです。

しかし、口から食べなくても、この必要量をまかなう仕組みが人体にはあります。肝臓が、様々な物質を材料として血液に放出するブドウ糖の量が1日約150g以上あるのです。

糖質は体にとって大切なエネルギー源ですが、この肝臓のはたらきのおかげで、脳や赤血球のために必要な糖質は、全く口から得られなかったとしても、不足することはありません。

■会議に出席するだけで血糖値は上がる

それでも「甘いもの」には癒しがあるから食べたい。そんな方も多いと思います。それは甘党の私自身も同じです。

というのも、緊張状態は、血糖値のコントロールという面でも、よい作用をもたらしません。精神が緊張している状況では、自律神経の中で交感神経という神経系が高ぶっています。

この交感神経系をつかさどるカテコラミンというホルモンは血糖値を上げてしまうことがわかっています。実際、何の飲食をしなくても、会議に出席しているだけで血糖値を50mg/dl近く上昇させたビジネスパーソンは私の外来にたくさんいらっしゃいます。

日本人男性ビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

一方、リラックスしたときにはたらくのが副交感神経です。GLP-1やGIPといったインクレチンが太らせることなく血糖値上昇を抑制するとお伝えしましたが、このうち、GLP-1にはホルモンとしての作用に加えて、副交感神経系を使って血糖値上昇を抑制するという機序があるとされています。

その意味では、リラックスすることそのものが、糖質疲労の予防・回復につながると考えてよいでしょう。

■血糖値を上げないのは「人工甘味料」

心をリラックスさせてくれる甘いもの。私はそれを、人工甘味料によって楽しむことをご提案しています。

人工甘味料は怖いものなのではないかと懸念する方もいらっしゃることでしょう。

2023年に世界保健機関(WHO)によって発表された「人工甘味料は体重減量に推奨できない」という報告[75]や、「WHO」傘下の「国際がん研究機関(IARC)」によって同じく2023年に発表された「アスパルテームには発がん性の可能性がある」との見解に、人工甘味料は危険だと見なす風潮が強まったように感じます。

確かに人工甘味料の発がん性を指摘する論文は存在していて、有名なところではサッカリンは雄のラットに与えるとがんが起こりやすいとの報告があります。しかし、雌のラットでも雄のマウスでも、そうはなりませんでした。人間の場合は言わずもがなで、根拠になど到底なり得ません。米国ではサッカリンが一度販売停止になったものの、その後再許可されています。

■「人工甘味料を摂取するとがんになる」は間違い

そして、アスパルテームに関する2023年の見解の中身は、アスパルテームを「漬物」と同じ程度のリスクとしたということにすぎません。それは、4段階ある発がん性のうち下から2番目の「2B」に指定したということなのです。漬物以外では、わらびの摂取などと同レベルで、発がん性のもっとも高い「1」にはたばこやアルコールの摂取などが含まれます。

山田悟『糖質疲労』(サンマーク出版)
山田悟『糖質疲労』(サンマーク出版)

人工甘味料と人間のがんとの因果関係をはっきりと証明した論文はいまのところ存在せず、エビデンスはありません。「人工甘味料を摂取するとがんになるのでは?」と警戒する必要はないのです。

なお、現在、日本で広く普及している人工甘味料の1つに「エリスリトール」があります。果物の発酵食品から抽出されるなどした天然由来の甘味料で、炭水化物の一つ「糖アルコール」に分類されますが、カロリーはありません。

摂取しても小腸から吸収され、血中を経てそのまま尿で排せつされるためエネルギーにならず血糖値も上がりません。米国食品医薬品庁「FDA」と欧州の医薬品庁「EMA」がともに「上限値を設定する必要がない」としており、間違いなく安全な食品と言えます。

■甘いものが食べたくなったら甘味料も一手

エリスリトール以外でよく使われる人工甘味料に「アスパルテーム」、「スクラロース」、そして天然甘味料の「ステビア」や「羅漢果エキス」があります。羅漢果も上限量は決められていませんが、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムなどには上限量が決められています。ただ、1日あたり缶ジュース15本分程度と普通の食生活では摂取しない量なので、普段使いするのであれば問題ありません。

日本でよく使用される人工甘味料の上限量は次のとおりです。上限量を摂取するのに必要なショートケーキの個数で示しておきますが、上限量を超えることがまず不可能だとご理解いただけるでしょう。

甘いものを食べたいときは、血糖値を上げない甘味料を楽しめばいいのです。人工甘味料なら、上限量を気にすることなく、思う存分楽しむことが可能です。

・アスパルテーム(甘さは砂糖の100~200倍とされる)……1日の許容摂取量/体重60kgの人でショートケーキ16個分
・アセスルファムカリウム(甘さは砂糖の約200倍とされる)……1日の許容摂取量/体重60kgの人でショートケーキ6個分
・スクラロース(甘さは砂糖の約600倍とされる)……1日の許容摂取量/体重60kgの人でショートケーキ18個分

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山田 悟(やまだ・さとる)
北里研究所病院 糖尿病センター長
1970年生まれ。94年慶応義塾大学医学部卒業。2013年(一社)食・楽・健康協会を設立。ロカボ=ゆるやかな糖質制限を提唱し、企業に対して啓発活動を行うなど、日本人の健康増進のために日夜活動中。著書に『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(いずれも幻冬舎新書)などがある。

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(北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟)

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