1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

ビヨンドMBAの可能性秘める日本の「100年企業」 元中小企業庁長官が語る「温故知新」経営の強み

東洋経済オンライン / 2024年1月1日 9時0分

他方で、ドイツの著名な政治・経済学者マックス・ウェーバー(1864~1920)は何と言ったか。代表作『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、ウェーバーはこう述べている。「アジア人(日本人含む)の資本主義は拝金主義で、キリスト教社会における倫理観はない。神(一神教)の監視がない儒教社会では資本主義は発達しない」と。

果たして日本の商人道は拝金主義だったか。資本主義は発達しなかったのか。前述のように、江戸の商人道はマックス・ウェーバーが生まれる100年以上も前に形成されている。

――日本の100年企業は世界からどう見られているのでしょうか。

近年脚光を浴びている「ゼブラ企業」。アメリカ西海岸の、社会課題の解決と利益追求の両立を目指す企業群だが、ゼブラ界隈の人々が着目しているのが日本の100年企業だ。あるゼブラ企業の経営者は私にはっきりとこう言った。「ゼブラの最終形は日本の100年企業です」と。

中国や香港では日本の100年企業をめぐるツアーが組まれ、経営者たちが続々と訪れている。京都で開かれた日本の100年経営に学ぶシンポジウムに清華大学が参加している。

気候変動やパンデミックが頻発する現代で、西側諸国も東側諸国も、日本の100年企業が持つ危機を乗り越える力、持ち堪える胆力がどこから生まれてくるのか気になっているのだ。

日本人が憧れがちなMBAに、100年企業が持つ胆力を伝授できるだろうか。企業価値が高まったら「売れ」と教えるMBAの教えは、100年企業が志してきたものとは異なる。だが、MBAの経営理論と100年企業には共通点があることも付言しておこう。

MBAと100年企業の共通点と相違点

――共通点とは。

一つはコールオプション理論だ。不確実性が高い市場に対しては一気に投資するのではなく、最初は部分出資を行い、少しずつ投資額を増やしていく漸進的アプローチのことをいう。MBAで教わるこの理論、100年企業の経営者たちは「身の丈経営」という呼び名で当然のように実践している。

リーンスタートアップという考え方もそう。まずは必要最小限の機能を持った製品を売り出し、市場の反応をみながら製品を改良して再投入していくマネジメント手法だ。スタートアップの成功率を高めるものとしてやはりMBAで教えられる理論だが、これも100年企業の創業者、経営者たちは当たり前のようにやっている。

一方で、MBAの経営理論と100年企業では決定的に相違する点もある。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください